米大統領選挙2024に見えた“男対女”の構図。政治におけるジェンダー分断が深刻化する背景
若い世代で男性たちの保守化と女性たちのリベラル化が加速している。経済的不安や社会的変化を背景にした政治におけるジェンダーの分断は、世界中で蔓延しており、もはや看過できないレベルに達している。アメリカ大統領選挙2024の直前、作家のアフア・ハーシュはUK版『ELLE』に寄稿し、この問題について意識を向けるよう私たちに訴えた。米大統領選挙の結果は決して他所事ではない――。 【写真】風格アップ! メラニア・トランプのビューティ遍歴
男性は自分たちが被害者だと思っている
最近ニューヨークに行ったとき、友人の男性があまりにも衝撃的な発言をしたため、私は思わず聞き返してしまった。彼は、現在性的人身売買と虐待の罪で起訴されているラッパーのディディ(ショーン・コムズ)が「魔女狩り」の被害者であると嘆いていたのだ。 ディディが無罪か有罪かについては、私は個人的に知っているのでショックは受けなかった。彼に対する容疑は恐喝、強姦、性的人身売買などで、まだ法廷では審理されていない。私がショックを受けたのは、男性が世間で裁かれる場合、女性たちは信用できないと友人が信じていたことだ。彼は世の中が男性に対して偏見を持つようになっており、この事件の事実がどうであれ不正は避けられないと考えていたのだ。 写真/2024年9月、性的人身売買や恐喝、性的暴行、暴力などの容疑で逮捕・起訴されたショーン・コムズ。現在も収容中。
若い男性ほどフェミニズムを警戒
こうした疑念こそが、私の友人を含め男性が右翼政治に傾きつつある理由だ。もちろんそれぞれの世代はインフレや経済成長の鈍化、住宅や安定した高給職の確保の難しさなどの苦難に直面している。しかし、各世代はもはや一つのまとまりを欠いて、2つに分断されている状態だ。Z世代を例に挙げれば、男性は、フェミニズムは良いことよりも悪いことの方が多いと考える傾向が上の世代よりも強く、同世代の女性は反対の考えを持つ。
政治的態度にはっきりと表れたジェンダーギャップ
「男女間の大きな乖離」と表現されているものは、単なる抽象的な現象ではなく、非常に現実的な選挙投票において大きな溝となっている。米国では最新(11月1日時点)の世論調査でトランプ氏が男性の間で8ポイント、ハリス氏が女性の間で9ポイントリードしていることが示された。これは、人種、階級、年齢だけでは説明できない17ポイントの差だ。 写真/アメリカ大統領選挙2024で戦った、民主党で現副大統領のカマラ・ハリスと共和党で前大統領のドナルド・トランプ。結果、勝敗を左右すると言われる激戦7州も全てトランプが押さえ、トランプの大勝となった。