米大統領選挙2024に見えた“男対女”の構図。政治におけるジェンダー分断が深刻化する背景
下の世代ほどより貧しくなる時代
男性と女性の投票傾向が離れていくにつれ、これは女性の平等に関する一種の国民投票であり女性が賛成票を投じ、男性が反対票を投じているのだと解釈したくなる。しかし、真実はより複雑で、おそらくより不快なものだ。 男性の収入は依然として女性よりはるかに高く、英国では今年その差は14%に達した。しかし英国では、若者が親よりも良い暮らしをする可能性は初めて低下しており、彼らの見通しは近年劇的に低下している。米国では、男性の収入は過去40年間で減少しており、つまり彼らの父親や祖父よりも収入が少ないということだ。
政治においてジェンダーの分断を生んでいる本当の理由は何か
この様な状況にも関わらず、若者世代は、グローバル化された資本主義の恩恵を他の誰よりも多く求めるよう社会化されてきた。ソーシャルメディアは彼らに機会を約束し、消費欲求を刺激する一方で、伝統的な形の男らしさも奨励している。そして女性たちは、これまでに得た脆弱な権利のために戦い続ける必要性を意識している。これらの相反する経験こそが、若い男女を保守派とリベラル派に大きく分ける原動力になっているようだ。
恐怖の政治から抜け出すことが大切
この観点から見れば、リプロダクティブ・ライツや移民問題、人種的・社会的正義の進展などに対する右翼の脅威は、経済成長の低下と希少資源をめぐる競争に対する恐怖の政治から生まれた副産物と言えるだろう。恐怖は意図的に煽られ、男性に対する武器として利用され、一方で女性はより過激化し、より強固に進歩的な考えを支持するようになっている。これは明らかに悪循環だ。 恐怖に根ざした政治は最終的には希望に道を譲らなければならない。それまでに、私たちはいったいどれだけの犠牲を払うことになるのだろうか。 写真/11月6日、カマラ・ハリス副大統領のアメリカ大統領選挙2024の敗北スピーチ後、身を寄せ合って涙を流す支持者の女性たち。
Translation & Text : Naoko Ogata From: ELLE UK