米大統領選挙2024に見えた“男対女”の構図。政治におけるジェンダー分断が深刻化する背景
“男対女”の構図は世界中で起きている
これはアメリカだけの現象ではない。ドイツでは、若い男女の間で30ポイントの差が開いた。英国ではその差は25ポイントだ。ポーランドでは、極右政党「コンフェデラツィア」が若い男性の票のほぼ半分を集めたが、同年齢の若い女性の票のわずか6分の1しか集めなかった。 研究者らがスコットランドの街で買い物中の若い男性たちにインタビューを行い、この現象の原因について尋ねたところ、ある男性は「男性は脅威を感じている」と語った。「だから、より保守的なロールモデルに目を向けるのです」。一方、一緒にいたガールフレンドの若い女性は、「私たち女性は近年、強い意志を持ち、自立するようになりました。一方でそういう男性は多くないと思います」と話している。 写真/2024年6月、ウィスコンシン州で行われた共和党大統領候補ドナルド・トランプの選挙集会に参加する若い男性たち。
多くの女性が暴力の被害者に
確かに女性は今日、より強い意志を持つようになったかもしれない。しかし、それは私たちを男性の力から守ってくれるわけではない。ディディへの告発、そしてカメラに捉えられて私たちが目撃することになった元恋人キャシーへの彼の暴行の様子は、男性の暴力を生々しく思い起こさせるものだった。 イギリスの警察は今年、アンドリュー・テイトのようなインフルエンサーによって少年たちが「非常に恐ろしい」方法で過激な女性蔑視へと駆り立てられていることについて「国家的非常事態」であると警告した。児童保護慈善団体「NSPCC」は、イングランドとウェールズの少なくとも12人に1人の女性が毎年暴力の被害者になっていると推定しており、これは約200万の人数に上ると言う。 写真/2022年12月、性的人身売買の容疑でルーマニアで逮捕された極右インフルエンサーのアンドリュー・テイト。“有害な男らしさ”の象徴的人物とされる。
フランスを震撼させたレイプ事件
性的虐待を軽視する姿勢で悪名高く、#MeToo運動で比較的無傷だったフランスでさえ、この問題に直面せざるを得なくなっている。 妻であり母であり祖母でもあった72歳のジゼル・ペリコは、夫によって薬を盛られ、意識を失った状態で80人以上の男性にレイプされ、その様子を夫が詳細に記録したとされており、性的暴力の加害者や被害者に対する我々の無関心な態度を一変させた。真実を受け入れて、理解することは難しい。普通の人々が、普通の場所で、私たちの身近で言葉に表せないほどの暴力行為を犯しているのだ。 写真/仏アビニョンの裁判所に出廷したジゼル・ぺリコ。