注目のオールシーズンタイヤ「ダンロップ シンクロウェザー」の実力を検証!すべての路面を試して感じた「安心感」
アクティブトレッド搭載のオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」が登場
さて、真偽を問いたくなるほどゴムにとって革命的な技術「アクティブトレッド」を搭載した市販製品がついに登場しました。その名も「シンクロウェザー」です。ダンロップから2024年10月1日に発売されるこれは、アクティブトレッドの技術を初めて採り入れたオールシーズンタイヤです。オールシーズンタイヤとは、ドライ路面における性能を確保しながら、スタッドレスタイヤに近いパターン特性を備えることで雪や氷の上でも走ることができる、いわば万能タイヤです。 シンクロウェザーは、アクティブトレッドに最適化したトレッドパターンを採用し、すべての路面状況に適した工夫が凝らされています。たとえばウエットでの高い排水性や、雪上での排泄性を高める「V字構造」のパターンを採用するほか、氷上性能で必要なエッジ成分(氷をひっかく細かな構造)を確保しています。 これを聞くと、スタッドレスタイヤにかなり寄せたオールシーズンタイヤなのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。実際シンクロウェザーを確認すると、そのパターンから非常にスタッドレスタイヤに近い風貌を感じさせます。ですが通常スタッドレスタイヤでドライ路面を走ることは、かえって柔らかすぎるタイヤによってグリップ力が低下するため危険とされています。そこでシンクロウェザーではドライ路面、すなわち温かい路面ではこれらのパターンの剛性を最適化して、とくにショルダー部分の剛性を高めているとのことで、安心してドライ路面でも走行ができるといいます。またオールシーズンタイヤが不得意とするノイズに関しても、パターン構造の工夫によって低減しているということです。
シンクロウェザーの真価を試す!まずはドライ&ウエットから
このシンクロウェザー、話だけ聞くと、そんな夢のようなタイヤあるのか?と思ってしまいます。そこでダンロップは「ドライ/ウエット」「雪上/氷上」の4種類の路面状況において、その実力を検証してもらう試走会を実施しました。筆者はその試走会に参加し、それぞれの路面状況における実力を試すことができました。またそこではスタッドレスタイヤ・サマータイヤとの乗り比べも実施。いったい、期待の新星はいかほどの実力を持っているのでしょうか。 まずはドライ/ウエットから試乗します。試乗車はカローラツーリングで、比較するタイヤはサマータイヤの「ルマン5+」、スタッドレスタイヤの「ウインターマックス02」。いずれもサイズは195/65R15で、ルマンとウインターマックスは各ジャンルにおける非常に実力の高いタイヤとして定評があります。まずこれらと乗り比べた結論から言うと、ドライ/ウエットいずれもシンクロウェザーの「安心感」を強く感じさせる結果となりました。 まずダンロップの岡山テストコース内のドライ走行からスタートします。ここではタイヤのノイズについてフォーカスを当てて試乗しました。まずルマン5から走り始めましたが、低速域(40km/h以下)での乗り心地の良さ、そして高速域(60km/h~100km/h程度)での静粛性の高さを実感することができました。また高速域のレーンチェンジではタイヤの剛性感が極めて高く、「安心」してドライブできたのも好印象でした。さすがはサマータイヤとして磨き込まれただけのことはあります。 続いて主役となるシンクロウェザーに乗ります。まず走り始めて、ルマン5との違いをネガティブに感じてしまう場面がありました。それは低速域でのタイヤの「硬さ」です。ショルダー部分の剛性を高めていることが影響するのか、ややゴツゴツ感を感じたのです。そしてペースを上げていくと、ルマンと比べると少しノイジーな印象で、やはりパターンが細かく刻まれている形状のためか、さすがにルマンの高い静粛性には及ばなかったように感じられました。 最後にウインターマックスに乗ると、低速時のゴツゴツ感はシンクロウェザーと大差なく、高速域ではさらにノイズが入ってくるという印象。ここまではシンクロウェザーと似ていましたが、高速域でレーンチェンジをすると「ふにゃっ」と腰砕け感のある動きを見せて少しヒヤリとしました。そして、ここで感じたのがシンクロウェザーの乗り味はとても安心感が高かった、ということです。最後に乗ったウインターマックスと比べると特に高速域での乗り心地の「ドッシリ」感が格違いに良かったことがわかりました。 続いてウエット路面にシーンを移します。まず前提として、ウエット路面ではサマータイヤがもっとも路面を捉えるグリップ力があり、逆にスタッドレスタイヤではパターンの溝が深く排水性が低いためウエット走行に適していない、という特性があります。ここではウエット路面におけるコーナリング性能を試しました。 まずルマンから走り始めると、テストコースでないとこんなスピードでコーナリングできない!と思うほど高いスピードでも安定してクルマの挙動を支えてくれました。また旋回時におけるアクセルペダルのオン・オフに対するクルマの動き方も非常にわかりやすく、突然クルマがグイっとインに入ることはなく、動きはいつまでも自然だったことが印象的でした。 続いてシンクロウェザーに乗ります。こちらはドライ路面での印象と変わらず、非常に安心感のある動きを見せてくれました。具体的には、コーナリング中の挙動が実にルマンと似ていました。むしろこちらの方が路面との当たりが柔らかい印象で、旋回中に外に膨らみそうな時でもグググっとタイヤが路面を捉えてくれている安心感がありました。 最後にウインターマックスに乗ると、走り出してハンドルを切り始めたその瞬間から舵が抜けてしまう感触があり、アクセルペダルを踏み増すことに躊躇ってしまいました。テストコースだから、と少し踏んでみるとすぐに車両のESC(横滑り防止装置)が作動。また旋回時におけるアクセルペダルのオン・オフに対するクルマの動き方もピーキーで、オフにした途端に後ろのタイヤが堪えきれずに横に滑りそうになりました。やはり雨天時にスタッドレスタイヤでクルマを走らせることはとても危険である、と改めて感じました。 というわけで、ドライ/ウエットでシンクロウェザーを走らせてもっとも感心したのは走行中の「安心感」です。ノイズに関しては残念ながらサマータイヤに及ばずといった印象でしたが、一方でどの速度域でも安心感のあるドライブが可能でした。なかでも特筆すべきはウエット路面での身のこなしです。およそスタッドレスタイヤに似たパターンをもちながら、ルマンを凌駕する性能を感じたことには驚きました。 ちなみにこの試走時には、一般道路でシンクロウェザーを走らせる経験もできました。車両はメルセデス・ベンツのGLCで、タイヤサイズは235/60R18でした。実際の「生きた」道で走らせた印象は、意外にもテストコースよりも好印象でした。というのも、テストコースで気になった低速時のタイヤの硬さやノイズが、思ったほど気にならなかった点です。当然、試乗車の車格が違いますから一概には比較できませんが、少なくともオールシーズンタイヤの需要がもっとも高いSUVタイプでの履きこなしは、かなり好印象だったと言えます。