中国のGDPが日本の4倍なら、世界経済における中国経済の重要性は日本の4倍?…「GDP」と「経済成長率」の意味を理解する【経済評論家が解説】
経済成長率には「名目」と「実質」がある
上記で自動車販売会社の付加価値も計算に加えたように、GDPはモノ(財およびサービス、以下同様)の生産量を計測する統計です。 GDPは、各国の経済規模を比べる際に用いられます。日本と米国の経済規模を比べる場合には、日本のGDPを為替レートを使ってドル建てに直して比較するわけです。日本と中国を比較する場合には、両国のGDPをドル建てに換算して比較するのが普通です。ドルは基軸通貨といって、世界中の貿易や投資等の多くで使われているため、国際比較でもよく使われるのです。 たとえば、中国のGDPが日本の4倍だとすると、世界経済における中国経済の重要性が日本の4倍あるというイメージとなります。ただ、中国のほうが人口が8倍いるとすれば、1人当たりの消費量は日本のほうが2倍だということになります。そこで、人々の豊かさを比較する際には「1人当たりのGDP」が用いられるわけです。 国際比較以上に目にするのは昨年と比較してどれくらい経済規模が増加したのか、という経済成長率です。単純に今年のGDPを昨年のGDPで割った値を名目経済成長率、名目経済成長率から物価上昇率を差し引いた値を実質経済成長率と呼びます。 GDPが増えても、「物価が上がったからGDPが増えた」という場合には、生産量は変化していないかも知れません。そこで、国内の生産量が増えたのか否かを判断するために、GDPの増加率から物価上昇率を差し引いた実質経済成長率が重要になってくるのです。そこで、単に「経済成長率」と記されているときは実質経済成長率を意味する場合が多いですし、本稿でもそうなっています。 経済成長率が高いということは、毎年の生産量が急激に増えているということですから、国民生活が急激に豊かになっていく、ということです。高度成長期には、人々の生活が急激に豊かになっていきましたが、最近の日本はゼロ成長が続いているので、国民生活のレベルはあまり高まっていないということですね。 経済が成長するためには、需要(買い注文)と供給(売り注文)がバランスよく増えていくことが必要です。高度成長期には、企業の生産量が毎年大幅に増えるとともに、工場を建てたりする企業やテレビを買ったりする消費者なども急激に増えていたので、経済が順調に成長しました。 バブル崩壊後の日本では、需要が伸びず、「生産しても売れ残るだけだから作らない。だから雇わない」ということで、経済成長率は低く、失業者が大勢いたわけです。 最近では、少子高齢化で労働力が不足しており、「作れば売れるのだろうが、作るための労働力が確保できず、作れない」という会社も多く、生産量が増やせないので経済が成長できない、という面も強いようです。