東京在住・独身45歳一人娘、東北の母へ仕送り「総額1,500万円」…母の死後、まさかの税務調査で追徴課税に。原因は「思い出の詰まった通帳」【税理士が解説】
相続時にしばしば問題になる「名義預金」。税務調査の恰好の的となっています。ここでは、長年子供から仕送りを受けていた親が、お金を子供名義の口座に貯金していた事例とともに、税務調査で狙われやすい名義預金について木戸真智子税理士が解説します。※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。 【すべて見る】都道府県別「知事の給与」…ランキング方式でチェック
母の死で判明した「仕送り貯金」
45歳になるAさんは、東京でデザイナーの会社を経営しています。Aさんの実家は東北地方で、大学進学を機に東京に住み始めてからは、年に1~2回、長期休みのタイミングで帰省する程度です。Aさんには76歳の母親がいます。父親が12年前に亡くなってからは、母親は一人で暮らしてきました。 Aさんは高齢になる母親が心配になり、東京に呼び寄せて2人で暮らそうと何度か誘いましたが、母親は、自分の生家も近く、親戚や友人もいるいまの家のほうがよいというのです。一緒に暮らすことは難しい状況でした。経営する会社の売上は好調だったこともあり、父親が亡くなってからは、Aさんは一人になる母親を案じて、仕送りをしてきました。月々6万円~10万円ちょっとのあいだで、そのときの状況に応じて送金を続けていました。 そんなある日、母親が亡くなり、相続が発生しました。Aさんは悲しみに暮れながらも、相続や名義変更の手続きをはじめていくことに。すると、父親が亡くなったときの財産はほとんど減っておらず、Aさんからの仕送りにいたっては、Aさん名義で貯金をしていたことがわかったのです。 Aさんは、帰省するたびに見る母親の様子から、日ごろ慎ましく暮らしていることがわかっていました。20年近く履き続けているジーンズや内ポケットに穴の開いたカバン、特売の日にまとめ買いした食料品から、「こんなに節約して……。昔はおしゃれがすきだったのに」「ネットも使えないのに、車で買い物に行くとしてもまとめ買いしてたら重いだろうに」と、たまには贅沢してほしいと願うようになりました。 できる限りの送金をして、母親に使ってほしいと思っていたのですが、まったく手をつけられておらず、生活費を切り詰めて過ごしていた状況に、Aさんは涙を流さずにはいられませんでした。おそらく、Aさんの将来のことを考えて、お金を少しでも残そうとしていたのでしょう。 そうなると、相続人はひとりっ子であるAさん一人であるため、母親が大事に残してきた財産については、相続税がかかる対象です。相続税の申告の手続きを始めたAさん。近所の人などに助けてもらいながら、なんとか進めていきました。そこで気になったのは、母親に渡したつもりだったAさんの仕送りについてです。