フランス「バルニエ内閣」が示唆する欧州政治の「新トレンド」
バルニエ首相は移民に厳しい姿勢を示すなど、基本的に保守的な政治家だ。しかし生粋のドゴール派であり、右翼との連携を明確に否定してもいる (C))Antonin Albert/shutterstock.com
フランスで、初夏の総選挙から約2カ月半を経た9月21日、新内閣がようやく始動した。右派政党「レピュブリカン」(共和主義者)のミシェル・バルニエ(73)を首班とし、大統領エマニュエル・マクロン(46)傘下の与党連合「アンサンブル」が加わる中道右派内閣である。レピュブリカンは総選挙で敗北を喫し、左派左翼連合「新人民戦線」、アンサンブル、右翼「国民連合」の3大勢力から大きく水をあけられて国民議会(下院)の第4勢力にとどまっていただけに、有権者の多くにとって意外な展開となった。 主に右派と中道が閣僚を分け合ったものの、反移民傾向の強い右派最強硬派の元老院(上院)議員ブリュノ・ルタイヨ(63)が内相に就任したことで、右寄り内閣のイメージを強く印象づけた。総選挙前のガブリエル・アタル(35)首班内閣からは、国防相のセバスチャン・ルコルニュ(38)と文化相のラシダ・ダチ(58)が残留した。左派からは唯一、元社会党のディディエ・ミゴー(72)が法相に入った。全般的に知名度に欠ける政治家が多く、かといって若々しいわけでもなく、アピール要素にはやや乏しい布陣である。 アンサンブルに加わる中道政党「民主運動」(MODEM)からジャン=ノエル・バロ(41)が外相に、マクロン直系の政党「ルネサンス」から熱心なウクライナ支持派のバンジャマン・アダッド(38)が欧州担当相に就任し、外交政策に大きな変化はないと見られる。
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国末憲人