市場開拓のカギは「インド中華」!? 醤油で世界を席巻するキッコーマンのインド戦略
インド人シェフの舌を魅了するキッコーマン醤油
“中華=ダークソイソース”のイメージが定着するインドで、日本の醤油をどう展開するのか。キッコーマンではローカルにはないコンセプトで、日本の醤油(本醸造醤油)を販売するのはもちろん、インド独自の商品開発も進めている。 販売子会社であるキッコーマン・インディア社を設立したのは2020年、翌年にインド市場参入を正式に発表。手はじめは外食産業向けに日本から本醸造醤油を輸入し、21年より本格的に営業をスタートした。 インド中華を作る飲食店のシェフを集め、ローカルのダークソイソースとキッコーマンの本醸造醤油で同じ料理を作ってもらい、味を比較。ほとんどのシェフから「本醸造醤油で作った方が、料理に旨味やフレーバーが生まれる」というポジティブな反応を得る。 「中華料理のレストランチェーンで、キッコーマンの醤油に切り替えた料理を1ヵ月試験的に出したところ、お客様の80%以上がおいしくなったという評価だったそうで。チェーン全店舗でキッコーマンの醤油に切り替えたというケースもあります」(五十嵐さん) インド人は食に対する意識は高く、食べることについやす時間や労力も長い。醸造から生まれる風味や旨味を敏感に感じ取った結果と言えよう。
インド向けの商品を開発し、外食産業から家庭への浸透も
2022年には「オイスター フレーバード ソース」を、24年に「ダークソイソース」をリリース。どちらもインド向けの商品で、日本から輸入した本醸造醤油をベースに「オイスター フレーバード ソース」はタイで、「ダークソイソース」はインドの委託先工場で製造している。 「ベジタリアンの人口が多い国なので、動物性食材を使用しないオイスターソース風の調味料を開発しました。ダークソイソースは“添加物不使用”を売りに、着色料や防腐剤、旨味調味料を添加しない製法でローカルブランドと差別化。コロナ禍以降、インドでも食の健康を意識している人が増えています」(五十嵐さん) ダークソイソースを発売するのは、キッコーマンにとって初のこころみ。4年かけて日本で開発したという自信作だ。 「本格的に海外進出した60年以上前、アメリカでは“ステーキに醤油が合う”ということを主婦たちに訴求してきました。インドでは“インド中華”を軸に展開。和食としての醤油づかいではなく、現地の食文化に合わせた商品展開が国際市場での成功の秘訣です」(五十嵐さん) インドでの需要拡大は、レストランへの普及活動からスタート。 「セミナーや料理コンテストを行うなどフードサービス業界にアプローチし、シェフや料理研究家などのインフルエンサーにファンになってもらい、味のよさや使い方、食の安全性の魅力をさまざまなレストランに広めてもらっています。さらに認知度が高まったタイミングで家庭向けの商品を投入し、将来的には一般的な調味料として家庭に浸透させていきたい」(五十嵐さん) 食の多様化が進むインドで受け入れられ始めた日本の醤油。キッコーマンの醤油が家庭のキッチンに常備される日も、そう遠くはないだろう。 取材・文/嶺月香里
@DIME編集部