フィデリティ不動産戦略、環境リノベで「逆風」に挑む-大手損保出資
(ブルームバーグ): フィデリティ・インターナショナルは、日本の機関投資家向けに脱炭素への建物などの改修を行う海外不動産ファンドの提供拡大を目指す。最近の金利上昇による打撃などを受け不動産への投資意欲が後退する中、グリーン移行に伴う投資機会に着目し差別化を図る。
世界の温室効果ガスの40%以上が不動産から排出され、特に欧州では改修を要する古いビルが多いとされている。ファンドの投資対象は欧州の不動産に特化する。取得した物件は省エネ対応などを通じ「ネットゼロ」で運営できるよう手を加え、環境重視の規約を基にテナントを入れ、評価を高めた上で売却する。
気候変動問題に取り組み、社会課題の解決と収益性の両立を図る「インパクト投資戦略」と位置付け、日本ではフィデリティ証券を通じ機関投資家に提供する。東京海上ホールディングスは、子会社の東京海上日動火災保険を通じた同戦略への出資を2月に明らかにした。
海外不動産投資を巡っては、金利上昇により厳しい運用環境が続いてきた。中でもオフィスビルは新型コロナウイルス禍が一段落した後も、空室率の高止まりに見舞われた。こうした逆風に挑む上で、ネットゼロに向けた改修を行う戦略は有効とみている。
フィデリティ投信の金融法人営業統括・吉澤和也氏は、ネットゼロ目標を掲げるような企業では賃料を追加で支払っても、グリーンなビルを借りたいという動きが出てきていると指摘する。欧州では、そうしたビルの供給は不足している。これによりプレミアム(賃料の差)が拡大すると、保有物件の評価が上がり、ファンドのリターンは向上する。
フィデリティは欧州各国のオフィスビルと倉庫などの物流セクターに投資するファンドをグローバルで募集しており、東京海上はインパクト投資と位置付けて出資を決めた。物流セクターに特化した戦略も別途投入し、3月までにオーストラリアの年金基金などから2億ユーロ(約340億円)を調達。両ファンドとも募集を継続中で、複数の日本の金融法人が投資を検討しているという。