15分以内の“遅延”は「遅刻」扱いなのに「残業」にはルーズ… 会社の勤怠「ダブル・スタンダード」はなぜ許されるのか
始業時間に厳しく残業時間に緩い「ダブル・スタンダード」
労働時間の計算にルーズな企業も多い。1月には、回転ずしチェーン大手「スシロー」が5分未満の労働時間を切り捨てて計算していたことについて、労基署が是正勧告を行ったと報じられた。 「日本人は外国人に比べて時間を守る」と言われることもある。だが、仕事に関しては、労働者が開始時間を守っても企業が終了時間を守っていない現状がある。海外から働きにきた人たちが、労働時間に関する日本企業のダブル・スタンダードに疑問の声を上げることも多い。 労働者にとって不利、企業にとって有利な日本の職場の現状は法律的に問題がないのだろうか。労働法に詳しい伊﨑竜也弁護士に話を聞いた。 ――電車の遅延で遅刻したのに、会社側に「○○分以内の遅延は遅刻として扱う」とされて、その間の給料が発生しなかったり人事評価に響いたりするのは理不尽に思えます。法律的には、会社側の対応に問題はないのでしょうか。 伊﨑弁護士:結論からいえば、給料を払わないことも、人事評価で考慮することも、問題ありません。 給料に関しては「労働者は労働をした後でなければ、会社側に対して給料を請求できない」という「ノーワーク・ノーペイの原則」が存在します。ただし、これはあくまで「原則」であるため、例外もあります。 たとえば、会社側に不当解雇された場合や不当な休職命令を受けた場合など、労働者には何らの非もないのに会社側が働かせてくれない場合には、労働者は実際に働いていなくても、会社側に給料を請求することができます。このような場合には、会社側に非があるためです。 電車遅延の場合には、労働者にはもちろん非はありませんが、一方で、会社側にも非はありません。双方に非がない場合は、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されて、会社側は遅刻分について給料を支払わなくてもいい、ということになるのです。 会社側がどのような人事評価をするかについては、会社側に広い裁量が認められています。明らかに不合理で、会社側が人事権を濫用したと評価されるような人事評価でないかぎり、不当な評価とはいえません。 電車遅延の場合、遅刻した労働者に非があるわけではないですが、一方で他の労働者は定時に出社して働くことができているのなら、電車遅延で遅刻した労働者について人事評価で不利に扱うことが「明らかに不合理」とはいえないでしょう。