15分以内の“遅延”は「遅刻」扱いなのに「残業」にはルーズ… 会社の勤怠「ダブル・スタンダード」はなぜ許されるのか
着替え時間や朝礼時間の扱いは?
――「着替え時間は労働時間に含めない」「朝礼が始業時間の前に含まれる」などのルールを設けて、実質的に労働者に始業時間よりも早く出勤することをなかば強制している職場もあります。このようなルールを設けることは、法律的に問題はないのでしょうか。 伊﨑弁護士:労働時間とは「労働者が会社側の指揮命令下に置かれている時間」のことです。 会社側が独自にルールを定めているとしても、客観的に見て労働者が会社側の指揮命令下に置かれている場合は、その時間は労働時間にあたります。 着替えについては、会社で制服が定められているなど、業務に従事するために着替えが必要不可欠であれば、労働時間に含まれるといえます。 朝礼についても、出席が義務として定められている、または事実上義務となっているのであれば、労働時間に含まれます。 したがって、着替え時間や朝礼時間を労働時間に含めないことは、その時間分の給料を支払っていないことになるため、法律上の問題があります。 会社側がこのような定めをしている場合、労働者は会社側に対して、その時間分の給料を請求することができます。 ――早出や残業をしている同僚からプレッシャーをかけられたり先に帰るのが気まずく思ったりすることが原因で、自分でも早出や残業をしてしまう労働者がいるようです。このような状況を放置することについて、企業側に法律的な責任は発生しないのでしょうか。 伊﨑弁護士:業務のために必要ではない残業については、原則として、会社側は残業代を支払う必要はありません。 実際に、残業を許可制にしている企業や、そもそも禁止している企業もあります。その場合も、原則として残業代を支払う必要はありません。 しかし、残業が常態化していて、会社側がそれを認識しているのに、何も対策せず放置している場合には、「黙示的に残業を命じている」と判断されたり「残業を許可している」と判断されたりする可能性があります。このような場合には、会社側は、労働者に残業代を支払う必要があります。 また、労働者側と会社側が三六協定(※)を結んでいても、残業時間が一定時間を超えた場合には、会社側に罰則が与えられる可能性があります。 さらに、長時間労働が原因で労働者が病気になった場合などには労働災害が認定され、高額な損害賠償金を支払わなければならない可能性もあるのです。 ※三六協定……企業が法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を従業員に命じる場合に、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられている、従業員の代表者などと結ぶ協定。名称の由来は、労働基準法第36条で定められていることから。