15分以内の“遅延”は「遅刻」扱いなのに「残業」にはルーズ… 会社の勤怠「ダブル・スタンダード」はなぜ許されるのか
「三六協定を締結しているなら残業には何の問題もない」のか
――企業の人事の立場から「遅刻は労働契約違反だから厳しく対応されても当然だが、三六協定を締結しているなら月45時間以内の残業には何の問題もない」といった発言がされることもあります。この認識は、法律的に正しいのでしょうか。 伊﨑弁護士:給料の金額は「始業時間から就業時間まで働くこと」を前提に定められています。 始業時間に遅れてしまった場合には「ノーワーク・ノーペイの原則」によって、会社側は労働者に対し、遅れた時間分の給料を支払う必要はありません。そういう意味では、遅刻が厳しく対応されるのは仕方がないといえるでしょう。 一方で、残業の場合には、終業時間を超えて働くことを命じられることになります。 労働者としては、「労働者は始業時間を守らないといけないのに、会社側は終業時間を守らなくていいのは不平等だ」と感じるかもしれません。 しかし、三六協定を締結している場合でも、労働者に残業させた場合、会社側は残業代を支払う必要があります。遅刻した場合はその分の給料が払われないが、残業した場合はその分の給料は払われるので、給料の点では、労働法は平等な考え方をしている、ということになるのです。 なお、三六協定には「残業をさせても労基法違反にはならず罰則を受けない」という効果はありますが、残業代を支払わなくていい、というものではありません。 会社には残業代を支払う義務がありますし、裁判で支払いを命じられた場合には「付加金」といって、本来支払うべき残業代に上乗せした分を支払わなければならない可能性があります。 始業時間と終業時間に関して労働者が不満を抱く背景には、「始業時間には厳しいのに、残業代はちゃんと払わない」など、会社側の態度にも原因が存在する場合もあるでしょうね。
弁護士JP編集部