「ニュートラル」は、なぜ1速と2速の間にあるの?
走行中はリターン式ですが、シフトパターンとしては「ボトムニュートラル」になります。これは停止中にロータリー式になるゆえの構造で、ニュートラルの出しやすさを優先した結果でしょう。 また、この変速機を備えるバイクは「シーソー式シフトペダル」を採用し、ツマ先またはカカトで踏み込むだけでギアチェンジができます。かきあげる操作が無いので、靴のつま先が傷まないというメリットもあります。
レース用のバイクは、上下逆!?
現行スポーツバイクの変速機は、ほとんどがリターン式でシフトパターンは1ダウン5アップです(6速車の場合)。しかし、これらのバイクをレースで使う際には1アップ5ダウンのシフトパターンに改造することが多く、コレを「逆チェンジ(逆シフト)」と呼んでいます。
逆チェンジにする理由は、加速時のシフトアップ操作がツマ先でかきあげるよりも、踏み下ろす方が素早く確実で、タイムの向上に役立つからです。 またレースではコーナーで非常に深く車体をバンクさせるため、左コーナーはシフトペダルと路面の隙間が非常に狭くなり、シフトアップのためにツマ先をシフトペダルの下に入れるのが困難になることがあります。それを回避するためにも逆チェンジは効果があります。 ただし公道と同じ正チェンジを好むレーシングライダーもいるので、必ずしも逆チェンジとは限りません。 それでは、ロードレースの最高峰であるMotoGPマシンはどうなっているのでしょうか? 6段リターン式ですが、ニュートラルは1速と2速の間にはなく、ハンドルのボタンまたはレバー操作によってニュートラルを出します。 MotoGPマシンは「シームレスミッション」と呼ばれる、一般的なスポーツバイクとは異なる特殊な変速機を装備しています。またレースの走行中にニュートラルを使う必要がないため、構造的にも誤操作を防ぐためにも、ボタンやレバー操作でニュートラルを出すように作られているのです。
伊藤康司