「ニュートラル」は、なぜ1速と2速の間にあるの?
あえてニュートラルを出しにくくしている!?
無段変速のスクーターなどを除けば、現行のスポーツバイクの変速機(ギア)は、ほとんどが「リターン式」です。車両によって6速や5速など変速の段数は異なりますが、たとえば6段リターン式なら1番下が1速で、その上がニュートラル(N)、さらに2速→3速……と上り、1番上の6速まで行ったら、折り返して(=リターンして)5速→4速……と下がり、1番下の1速に戻ります。 【画像】え...!じつは種類があった!? これが「シフトパターン」です。画像で見る!(10枚)
ここで少々疑問に感じるのが、なぜニュートラルは1速と2速の間にあるのか? です。操作に慣れないと、1速で停止してニュートラルに入れようとしたら、通り過ぎて2速に入ってしまい、シフトペダルを踏み下げたらまた1速まで落ちて……を繰り返すうちに信号が変わった、という経験もあるでしょう。そう考えると、ニュートラルは1番下にあった方が分かりやすいし、出しやすいように思えます。 しかし、走行中にシフトダウンした際に、1速に入れたつもりが間違えて1番下のニュートラルまで下げてしまったら、エンジンブレーキが効かずにスーッと惰性で走ってしまいます。これは感覚的にも予想に反して加速するようなイメージなので、非常に危険です。 そのため、ニュートラルは敢えて入れにくい(走行中に入りにくい)場所で、かつ停止や発進に便利なように1速と2速の間に配置しているのです。
とはいえ昔は、リターン式でも1番下がニュートラルの「ボトムニュートラル」と呼ばれるシフトパターンのスポーツバイクも存在しました。有名なところではカワサキ「500SSマッハIII」が、5段リターン式のボトムニュートラルでした。 なぜ「マッハIII」がボトムニュートラルだったのか理由は定かではありませんが、他と違う個性を打ち出したかったのかもしれません。ちなみに1976年に「KH500」にモデルチェンジした際には、一般的な1ダウン4アップのシフトパターンに変更されました。
実用車は、ニュートラルの出しやすさを重視
バイクの変速機は「リターン式」の他に、かつては「ロータリー式」がありました。これは昔のホンダ「スーパーカブ50」などの実用車に採用され、当時は3段変速でニュートラル→1速→2速→3速→ニュートラル……と、クルクル回転するようにギアチェンジが出来ました(シフトダウンも同様)。 1番高いギア(3速)から直接ニュートラルに入れられるロータリー式は、短い距離で発進・停止を頻繁に繰り返す新聞配達などで使い勝手が良かったのです。 とはいえ走行中に3速からニュートラルを経由して1速に入れてしまうと、強いエンジンブレーキが効いて後輪がロックする危険もあり、やはり運転には慣れが必要でした。 そこでホンダは、走行中はリターン式で、停車時のみロータリー式になる独自の変速機を開発し、後のスーパーカブや、そこから派生した「クロスカブ」や「CT125・ハンターカブ」、「ダックス125」等に採用しています。