知られざるベトナムのリゾート。自然保護地域で過ごす、アマノイの休日。
アクティブに過ごしたいときの選択肢の多さもアマノイの魅力。
脳内スイッチが完全にリゾートモードに切り替わったところで、カートを呼んで海岸沿いにあるビーチクラブへ連れて行ってもらった。ダイニングエリアとプールを備えたクラブの目の前には、透明度の高いプライベートビーチが広がり、モーターを使わないSUPやカヤック、ウィンドサーフィンなどのマリンアクティビティが無料で遊び放題となっている。 さらにビーチクラブの横にはバレーコートやビーチサッカーコート、アーチェリーなども備え、ボールの貸し出しやアーチェリーのフリーレッスンも行っている。こうしたサービスもあってか、アマノイは決しておこもり専門のリゾートではなく、アクティブに過ごしたいカップルや、小さな子連れのファミリーの姿も多く見られる。 またアマノイに隣接するヌイチュア国立公園は、2021年にユネスコの世界自然遺産にも登録され、豊かな生態系を維持している。海の次に山側の魅力を堪能するのであれば、まずは敷地内にあるゴガ・ピーク・トレッキングコースをおすすめしたい。登り始めてからわずか15分ほどで、展望台までたどり着くので、初心者でも気軽に登頂可能。できればまだ暗いうちに出発し、タイミングを計って展望台で日の出が見られたらベストだ。日中明るいうちであれば個人で登ることも簡単だが、このようにサンライズ目的の場合は、アクティビティとして申し込みスタッフにガイドしてもらうのが良いだろう。 ちなみにもっとハードなトレッキングを楽しみたいという方は、最長20kmにも及ぶキングマウンテンへのトレッキングコース(約9時間)や、「三層の滝」を意味するバタン滝での水遊びやピクニック(約5時間)といったコースもおすすめ。実際、こうした本格的なネイチャーアクティビティへの参加を楽しみに、アマノイに泊まりに来る自然愛好家も多いそうだ。 各国のローカル料理のクッキングクラスに参加するのも、アマンを泊まり歩く楽しみのひとつだ。米粉を使うことが多いベトナム料理は日本人の口に非常に合うが、実際に家庭で作ったことがある人はそう多くはないだろう。アマノイでは岩石に囲まれた「ロックスタジオ」というダイナミックな多目的スペースがあり、そちらで2大定番ベトナミーズであるフォーと生春巻き、そしてローカルデザートのチェー・セン・ロンガンを実際に作らせてもらった。 印象的だったのは、シンプルに見える麺料理のフォー。乾煎りして香りを出したジンジャーやエシャロット、スターアニス、カルダモンなどの複数のスパイスをスープに入れ、弱火で煮出して味を調えることで、あの独特の風味が出せることを知った。食からのアプローチでローカル文化を楽しく学ばせてくれる手法はアマンの得意分野。ちなみにアマノイの本来のレシピでは、本来牛骨を3時間火にかけてスープを作るのだが、そちらは事前にシェフが仕上げたものをいただいた。最後にレシピが書かれたクックブックがおみやげにもらえるので、料理好きな方はぜひ参加してみてはいかがだろうか? ベトナムの小さな漁村を訪れるというのも、普通はなかなかできない文化的な体験。今回はもうひとつ、アマノイが提供するローカル・エクスペリエンス「Vinh Hy Awakening」というアクティビティに参加した。こちらはリゾートから最寄りの漁村ヴィンヒーを早朝に散策し、伝統的な木造建築ニャ・ルオングで朝食をいただくというもの。ヴィンヒーの街では、十数頭の牛の行進を見かけたり、朝市の活気を体験したり、一寸法師のような手こぎ舟での漁の様子を眺めたり、リゾートにとどまるだけでは決して味わえない旅の醍醐味(だいごみ)に遭遇することができた。 代々漁業に携わり、魚醤の製造工場も経営するというナムさんのご自宅に着くと、そちらの庭で朝ごはん。事前にアマノイのスタッフがセッティングしてくれていて、できたてのおいしい朝食をいただくことができた。往路は約2.5kmの散歩だったが、食後の復路は目の前の桟橋から専用ボートに乗り、アマノイのビーチへと戻る。旅先の刺激とリゾートの快適さ。一見相反するように見えるこの2つを、地域に根差すことを哲学とするアマンは毎回高いクオリティで両立して提供してくれる。アマンの真髄に触れるという点でも、アマンに泊まったらぜひひとつは現地アクティビティに参加することをおすすめしたい。 そしてリゾートに戻ると、最後は残りわずかとなった滞在を惜しむように、客室での時間を過ごした。今回は3泊での滞在。これくらいでちょうどいいと自分に言い聞かせていたが、本音を言えばまだまだゆっくりしたいもの。アマンの滞在は毎度魔法のようにすてきだが、過ぎ去る時間の早さもまた魔法のごとくあっという間なのが困ったところである。 それにしても日本からわずか2時間しか時差のない場所に、こんなにも別世界を感じられるリゾートがあったなんて。それなりに旅してきたつもりでも、世界はまだまだ実際に足を運んでみないとわからないことだらけである。改めて周囲を見渡して、静寂に耳を澄ませ、海と山が織りなす美しい眺望をゆっくりと脳裏に焼き付けた。 アマノイ https://www.aman.com/ja-jp/resorts/amanoi
朝日新聞社