NHK『団地のふたり』59歳女優の“相棒”とのやりとりの魅力。大ヒット民放ドラマでも見せていた
小泉今日子の相棒関係とは、専売特許みたいなもの
そりゃあさ、商業作品で活躍するプロの俳優なんだから、プロの相手俳優とは共闘する意味での相棒関係を結ぶでしょという指摘があるかもしれない。それも当然そうではあるのだけれど、でも小泉今日子の相棒関係とはいわば、専売特許みたいなものなのだ。 ここで、テレビドラマ史上のベストオブベストコンビが登場する小泉の主演作『最後から二番目の恋』についてふれておきたい。同作で小泉の相棒となるのは、中井貴一。中井扮する鎌倉市役所職員・長倉和平と都内から鎌倉の古民家に引っ越してきたテレビ局のドラマプロデューサーである吉野千明(小泉今日子)が、愛すべきコンビ愛をにじませる。 和平が兄弟たちと一人娘と暮らす長倉宅と千明が引っ越してきた古民家は隣近所。お互い毎日のように住まいを行き来して、空間をシェアする様子は『団地のふたり』とよく似ている。小泉今日子的、相棒関係が成立するには、最適な立地環境である。
小泉&中井による小競り合い
『団地のふたり』の野枝が団地から勤務先の大学まで往復4時間かけて通勤しているように、千明も最寄りの極楽寺駅から鎌倉駅を経由して都内のテレビ局まで長距離通勤している(往復でほとんど同じくらい!)。そしてどちらも特に帰宅後に重要なドラマが展開する。 帰宅時、極楽寺駅に先に到着するのはだいたい千明。和平はそのすぐあとに到着して、改札前で通勤定期を探してカバンをごそごそする千明をお先にと追い抜いていく。自分も改札を通り、待て待てと千明が追い付くという帰宅動作の小競り合いが恒例。 隣近所の自宅まで今度は会話による小競り合いが続く。毎回どうでもいいような話題で、ああでもないこうでもないと延々やり取りするうちに、あっという間に自宅前の踏切に到着する。 その途中、自分たちが大人げないやり取りをしていたなと気づく瞬間が愛くるしいのだが、そのとき必ず千明が「ヘヘッ」と短く笑い、和平もまた「ヘッ」とさらに短く笑い返す。この短い笑い声の連動が同作全体の通奏低音となる。小泉&中井による小競り合いは、彼らにしか醸し出せない唯一無二の相棒関係を端的に示している。