TVアニメ『アオのハコ』の映像美 光の演出が描き出す“恋をしている人の視点”
心の“揺れ”を想像させるアニメ版ならではのテンポ感
さらに、緩やかなテンポで進んでいくことも本作の特徴だ。キュンとする展開ばかりではなく、クスッと笑える描写も少なくない。かと言ってドタバタ劇でもなく、ストーリーはあくまで丁寧に進行していく。登場人物の表情だけを切り取った画面も多く、心情に感情移入させやすくしているのだろう。また、大喜以外の登場人物は顔を赤らめたりなど、“わかりやすい好意”をあまり表出しない。ここにも“大喜目線”の演出が徹底されており、「今、何を考えているのだろう?」と考えながら観られるのも面白い。 そもそも漫画であれば手を止めて前のページに戻ることはできるが、アニメではそうもいかない。が、登場人物の心の“揺れ”を想像させられる。そういった工夫も原作の良さをアニメならではの表現の良さなのではないだろうか。 そもそも漫画は、手を止めて前のページに戻るなど読者のペースで楽しむことができる媒体である。一方でアニメは基本的に演出の意図によってペースが作られるものだ。本作で言えば、登場人物の心が動く展開において、その心の“揺れ”を視聴者に想像させるようにスローなテンポが多用されていた。原作の“良さ”をテンポ感によって増幅させていた、アニメならではの見事な演出だろう。 澄み切った“アオ”が鮮やかな青空、朝日が差し込む早朝の体育館など、画集のように美しいアニメ『アオのハコ』。アップで次々と映る登場人物の表情もデッサン集をめくっているような見応えがある。そんな映像美が映し出され、ながら見するのが難しい作品と言っていい。見どころが多すぎる『アオのハコ』から目が離せない。 参照 ※ https://x.com/Amzk0303/status/1841136416493084966
望月悠木