皇位継承の重要祭祀「大嘗祭」 五穀豊穣を祈る意味とは?
●政教分離か 伝統文化の問題か
皇位継承の儀式・祭礼の中でも、剣璽等承継の儀、即位礼正殿の儀は国事行為であるのに対し、大嘗祭は皇室行事として行われます。大嘗祭をめぐっては、神道形式で行われることもあり、憲法の政教分離の原則との整合性を指摘する声もあります。実際、平成の代替わりのときには、国費支出の是非などをめぐって各地で裁判が起こるなど、論争になりました。 それに対して、所氏は大嘗祭などの宮中祭祀は伝統文化の問題として考えるべきだといいます。 「政府が中心となって行う国事行為としての即位礼は大事だが、一方で皇室の伝統的な祭祀、お祭りを皇室行事として行うことも大事。政府が関与するのはいわば世俗的なことだが、皇室行事というのは世俗や政治を超えた伝統文化として行われている」 さらに大嘗祭の意義について「自然から取れるもの、要するに畑作のもの、水田作のものを大事にしてきたのが日本人の特徴。そういう日本古来の生活文化というようなものを後世に伝えていく意味がある」としました。 所氏によると、海外の王室の事例をみても、たとえばアメリカの大統領は就任式で聖書に手に置いて宣誓したり、イギリスの国王はウェストミンスター教会で戴冠式を行ったりしており、またタイの王室では仏教形式で行われることなどから「こうした皇室の行事に宗教的な要素があるのはむしろ自然なこと」との見方を示します。「宗教性があることは確かだが、それだから良くないというのは見当違いで、世界を広く見れば、むしろそれがスタンダードだともいえる」 平成も令和も「即位礼」は国事行為、「大嘗祭」は皇室行事として行われました。所氏は「世俗的なことは政府が中心となってやり、宗教性が伴う象徴的なお祭りは皇室行事としてやるという、棲み分けをすることにむしろ意味がある」といいます。 その上で、皇室の行事に「仏教形式でやったらいい」「キリスト教形式ではどうか」などと政府が口出ししないということが大事だと述べました。