米国のゲイリブに憧れて ゲイとして生活感のある暮らしを手に入れたいま
今年6月初旬、大塚さんはパートナーのシンジさんともにローマを旅していた。カズさんの死後、いくつか の出会いや別れを経て一緒になった年下のパートナー・シンジさん。シンジさんとともに過ごしている月日 長さも、カズさんとのそれをとうに超えた。4年前には養子縁組手続きも行い法律上でも家族となり、毎年出掛ける海外旅行は二人の恒例行事となっている。 シンジさんは都内で公務員として働きながら、社会人入試で多摩美術大学へと入学し演劇を専攻をしてい たという過去を持つ。深い所でつながり合える二人は言語感覚が近く、ともに暮らし始めてからも、価値観で ぶつかり合うこともなく、話飽きることがなかったという。
そんな大塚さんにとっての愛とは、二人でちゃんと向き合い、お互いを大切にすること。日本のゲイ間での関係構築ではまだまだ希有であった、「プライベートを共有し、親密なコミュニケーションをとり続ける同性間のパートナーシップの大切さ」について、大塚さんから影響を受けた人々も少なくない。それを気づかせてくれたのはカズさんやシンジさんをはじめ、これまでに人生をともに歩んできた幾人かのパートナー達との時間であり、それらは大塚さんにとって一番の財産となっている。 「しかし」と彼は最後に付け加える。「僕が死ぬときに枕元に彼がいてくれるかどうかなんてわからない し、明日のことだってわからない。もしかすると彼が先に逝くかもしれないし、地震で明日二人とも逝くか もしれない。だからこそ今この一瞬一瞬を大切にして生きていきたいんだ」 思い出の染み込む東京の片隅で、大塚さんは黙々と自分の世界を作り出し続ける。いつまでも心揺れ動く、現在進行形のままに。 (取材・文・撮影/ 藤元敬二)