人類が初めて「宇宙人」にメッセージを送ってから50年 何を伝え、何が起こったのか
天文学者に与えた大きな影響
返信が来る確率はごくわずかだが、この送信が天文学者に与えた影響は大きかった。 「この試みは、(星間通信の)可能性に対して私たちの考えを大いに広げました」とメンデス氏は言う。「他の生命体は私たちを理解できるのだろうか? もし私たちが信号を探せるなら、他の文明も同じことをしているのではないだろうか?」といった問いが生じた。 1974年11月の運命的なその日の後、メッセージは送られていない。「M13」までの距離を考えると、返信が来るには約5万年かかる見込みだ。 天文学者たちは結果に期待はしていない。そもそもこのメッセージは返信を期待して送られたのではなく、知的文明が人類の呼びかけを聞くための装置を持っているわずかな可能性にかけ、人類が宇宙に働きかけられることを示すために送信されたものだ。 それでも、他の惑星の生命体と交信できる可能性はゼロではない。そのため、天文学者たちは、このような驚異的な文化交流がもたらすであろう課題について考えざるを得なかった。
地球外生命体との接触のリスク
アレシボ天文台からメッセージが送信された後、科学者たちは、このメッセージが幅広い議論もなしに遠い宇宙へ送られたことに懸念を示した。 「もし今日このようなメッセージを作ろうとするなら、当時よりも包括的で知的なアプローチを取りたいはずです。基本的に、当時のメッセージの90%は、44歳の白人男性であるフランク・ドレイクがひとりで作成しました」とアイザックマン氏は言う。「より文化的かつ知的に誠実な方法を取ろうとするなら、もっと幅広い文化的、認知的視点を取り入れたいところです」 また、積極的に宇宙に向けて呼びかけると、友好的でない宇宙人の注意を引き、人類に危険をもたらす可能性があると警鐘を鳴らす声もある。 中国の作家、劉慈欣(リウ・ツーシン)の『三体』のようなSF作品も、宇宙の文明に人類の居場所を発信するせいで、人類が攻撃の標的にされる可能性を考慮している。この作品では、登場人物たちが「ダークフォレスト理論(宇宙文明は危険でいっぱいの森の中に隠れている獲物のようなものだという仮説)」について議論する。彼らは敵対的な異星の住人を恐れ、他者に自身の存在を知らせたい衝動を抑える。 米SETI研究所(地球外生命の発見を目的とした非営利組織)のような団体は、こうしたメッセージを発信するための国際的なプロトコルを提案した。「天の川銀河の他の文明に意図的に信号を送ることは、メッセージの内容と接触の結果の両方について、地球上のすべての人々の懸念を引き起こします」と、影響力のある科学者グループが2015年の声明で述べた。「メッセージを送る前に、世界規模の科学的、政治的、人道的議論が必要です」 メンデス氏は、人類の存在を宇宙人に知らせることは無謀だと考える専門家もいるが、たった一度の電波送信には、地球から常に発信されているテレビやラジオの信号という競争相手がいると指摘する。