グルグルぽーん!で飛んでく宇宙船、 1万G負荷テストをクリアしました
遠心力でグルグルぽーんっと宇宙船を空に打ち上げようというプロジェクトを初めて耳にしたのは、2021年のこと。小学生が考えたアイデアみたいだなと思いましたが、そこから着実に進化を遂げ、ついに大きなマイルストーンとなる負荷テストに成功しました。 地球の重力の1万倍のGがかかる負荷テストを実施しました。
グルグルぽーんで衛星を打ち上げる未来
遠心力を利用した打ち上げを模索する、カリフォルニアの宇宙系スタートアップSpinLaunch。 試作機の打ち上げ実証テストは以前から行なわれていましたが、今回初めて、積荷を想定した既存の人工衛星でテストを実施。打ち上げ時の運動エネルギー、つまりグルグルグルで力を貯めるときに非常に大きなGがかかります。このGに積荷が耐えられるかどうかの負荷テストがラボで行なわれました。 人工衛星にラボ内で最大1万Gの負荷をかけたところ、見事テスト成功(=人口衛星の損傷なし)。これで、少なくとも小型人工衛星なら、地球低軌道上の送るのにグルグルぽーん打ち上げ技術が使えることが証明されました。 どれだけ、打ち上げシステムが理論上可能であっても、その負荷に耐えられる荷物がなければ意味がありません。ゆえに、今回の負荷テストは将来の実用化に向けて非常に大きな意味をもつ一歩となりました。 米Gizmodoのメール取材にて、SpinLaunch担当者はこうコメントを寄せてくれました。 将来的なクライアント向けに、(今回のデモは)価値ある事例研究となりました。また、今後SpinLaunch向けに人工衛星を作るならどうすべきかという一般的な質問の答えの一部にもなりました。このテストで、多様な積荷を考えていく基礎が提供できたと思います。
負荷に耐えるための秘訣
負荷テストに使用された人工衛星は1U CubeSa。ただし、これをそのまま使用したわけではありません。負荷に耐えられるよう、ちょっとした工夫が追加されています。中でも大きいのは、単電池をすべて回転させ柱のようにし、長軸方向に自重を支えられるよう工夫したこと。単電池には糊付けも施しました。また、使用された材質をアルミ6061からアルミ7075に変えて強度をアップし、サーキットボードを補強。 手直しゼロというわけにはいきませんが、比較的ちょっとした加工で1万Gに耐えられることがわかったのは大きな成果。SpinLaunch担当者いわく、最近の人工衛星は多くのパートがそもそも高い負荷に耐えられるようにできているといいます。 すべての部品、すべての技術が、打ち上げ環境をクリアできるとは言いませんが、高性能かつ低コストの人工衛星でも、我が社の打ち上げシステムに耐えられると十分証明することができました。 SpinLaunchは、運動エネルギーを活用した技術で打ち上げの低コスト化、サステナブル化を目指しています。実現すれば、打ち上げコストは従来の科学燃料を使うロケットの9割カット、使用燃料量は7割カットできる想定。 ちなみにJAXAによれば、人間が宇宙に行くための打ち上げで耐えられるのは、最大でも7Gほどとのこと。なので、グルぽーんに人間が乗ることは絶対にありません。
そうこ