コンゴからの「疾病X」、コロナ禍を忘れ去った日本人に迫るパンデミック危機の正体
たとえば、コロナ禍発生当時、多くの学者が言っていたのは、シベリアの渡り鳥が中国南部の野鳥にウイルスを感染させ、それをコウモリやハクビシンなど中国の野性動物が食べて、さらにそれを人間が食べてSARSやコロナが発生したというメカニズムです。特にシベリアで凍ったまま温存されたウイルスを渡り鳥が運ぶメカニズムは、鳥インフルエンザにおいてすでに解明されていて、それは持続的にやってくることもはっきりしています。 鳥インフルエンザはまだ人間への影響は少ないのですが、数年に一度新型ウイルスがパンデミックを起こすというメカニズムができ上がりつつある国際環境や、SARS、新型コロナの発生原因がある程度わかった以上、世界中のパンデミック監視機関は先回りして、しかるべき手を打つべきです。 ● 中国をどこまで説得できるか? 世界の浮沈をかけた「先回りの対応」 たとえば、新型コロナの発生が初めて確認された中国南部に観察所・研究所を設け、とにかく中国だけに検査を任せず、野性動物食、特に生食の習慣を規制するといった啓蒙運動を行うべきだと思います。現地での定期的な検査の実施とその結果の公開も必要です。そうした草の根的な取り組みをしないと、今後10年に一度はパンデミックが起こり、地球の社会・経済に大きな打撃を与えかねません。 翻って日本は、いつの間にか失ってしまったパンデミックに対抗するための新しいワクチンや薬品の開発能力の再建に力を注ぎ、最終的には感染が爆発する都市集中型の構造にも工夫をする必要がある時代にきていると考えます。 石破首相は防災庁の創設を訴えましたが、パンデミックもれっきとした大災害。この対策もできる省庁として、大きな未来図を持った世界の模範になるようなパンデミック対応国家を作ることが必要です。それこそが、日本の世界での地位を再び向上させ、武器ではない防衛力、外交力を身に付ける機会になると思います。 (元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)
木俣正剛