コンゴからの「疾病X」、コロナ禍を忘れ去った日本人に迫るパンデミック危機の正体
ただ、感染者にとっての症状は深刻で、特に幼い子どもが病に苦しんでいることは事実です。感染者は全員が極度の栄養失調状態にあり、その多くは5歳未満でした。そういう意味では今回の「疾病X」は、健康状態が異なる他の場所では同じように爆発的感染は起きないかもしれません。 ● 実は新型コロナも「疾病X」だった WHOはどこまで信用できるか? 実は、「疾病X」という名前自体が、この恐怖のウイルスを指す言葉ではありません。この言葉は数年前、エボラウイルスなど既知の脅威ではなく、未知の脅威に対する医療面の備えを科学者らに促すことを目的に作られた言葉なのです。 比較的広範囲に及ぶエピデミックや、それよりも規模が大きいパンデミック(世界的大流行)の恐れがある将来の感染症の拡大に迅速に適応し、それに対応できるワクチンや投薬、診断検査といったプラットフォームの技術開発を働きかけるという発想で、作られた言葉と言っていいでしょう。 WHOは2017年に重症急性呼吸器症候群(SARS)やマールブルグウイルスなどと並んで、研究の最優先事項とされる病原体のショートリストに「疾病X」を追加しました。新型コロナも19年末にパンデミックの発端となった際、「疾病X」の一例となっていたのです。 WHOのテドロス・アダノム事務局長は、患者から採取した検体を検査した結果、12例のうち10例でマラリアの陽性反応が出たことを明らかにしました。「ただし一つ以上の疾患が関係している可能性もある」としています。11月30日に専門家チームが現地に派遣され、12月10日にはWHOのチームも合流。引き続き検体を採取して流行の原因究明にあたっているというのが、現状のようです。 しかし、WHOの検査や報告を素直に信じていいものでしょうか。新型コロナウイルスでのWHOの信じられないほどの対応の遅さと情報公開の杜撰さを考えると、わが国は今度こそ、きちんと準備をしなければいけないのではないかと考えます。