掛布雅之が岡田監督に送るメッセージ。「金本の全力疾走、矢野監督の築いた財産。阪神も巨人のようにバトンタッチを大切にしてほしい」
2023年シーズン、阪神タイガースは1985年以来、実に38年ぶりの日本一に輝きました。「ミスタータイガース」の愛称でファンに愛され続ける掛布雅之さんは、ここまでの阪神の歩みをどのように振り返り、現在の球界をどう捉えているのでしょうか? その著書『虎と巨人』から一部を紹介します。 【写真】花束を手に、甲子園球場での引退試合にて。1988年(写真提供:読売新聞社) * * * * * * * ◆野村、星野の外様監督で新しい風 阪神の歴史を振り返ると、野村克也さん(1999~2001年)、星野仙一さん(2002年~03年)と、阪神以外のOBが監督として新しい風を入れたことが転換期となりました。星野さんが2年目の前に半分ぐらい血の入れ替えを行いましたから。 その中の一人が広島からFA(フリーエージェント)で獲得した金本知憲でした。星野さんの剛腕で勝てるチームに変えたのですが、やはり一番大きかったのは金本の存在です。 阪神の歴史で金本のようなタイプの選手はいなかったと思います。だから星野さんは、金本を広島から獲ることによって、チームの根っこの部分を変えたい気持ちがあったはずです。 古くは藤村富美男さん、田淵幸一さんにしても私にしてもそうですが、阪神にはホームランを打てる四番打者像がありました。金本の阪神移籍1年目は三番でしたが、2年目に四番を打ちました。
◆日本一につながった「金本の野球」 そして他の四番打者と何が違うかというと、一塁までの全力疾走です。少年野球の頃からたたき込まれた野球の基本ではありますが、プロになると難しくなるのです。 7割、8割では走りますが、1年通して全力で走るのは並大抵のことではありません。それを広島でトリプルスリーを達成した金本が加わり、走る意識を阪神に植え付けたのです。 それが伝統として20年経っても受け継がれ、2023年の日本一につながったと思っています。四番の大山悠輔が「金本の野球」を実践したからです。 連続フルイニング出場に代表される休まない野球もそうです。金本の姿を見て育った鳥谷敬(たかし)、鳥谷を見て育った大山と受け継がれてきたのです。
【関連記事】
- 若い掛布雅之が王貞治から学んだ<ホームランの極意>とは。「田淵さんは優雅さが魅力だったが、王さんのような厳しさはなかった」
- 掛布雅之が「阪神の暗黒時代」を振り返る。「92年の<亀新フィーバー>に自分が加わっていれば違う結果に導けたかもしれない」
- ミスタータイガース・掛布雅之が語る<阪神の四番問題>。「私の引退後、本物が育たなかった原因はズバリ甲子園球場にある」
- 流行語大賞は阪神・岡田監督の「アレ(A.R.E)」に決定!阪神タイガース優勝が教えてくれる3つの学びーファンでなくても「アレ」は役に立つ
- 工藤公康「広岡式・西武の練習量はけた違い。でもその意味に後から気づき…」合氣道家・藤平信一が探る<頭で理解>と<体で覚える>の決定的違い