資さんうどん、「北九州のうまさ」で狙う列島制覇、創業者の死を越えて、うどん一杯に込めた本気
佐藤社長はソニーや外資系コンサル、ファーストリテイリングで経営変革や店舗運営などの経験を積んだ人物だ。資さんについてもユニクロ時代から知っていたという。 ■外食チェーンなのにバラバラ 佐藤社長が最初に取り組んだのは会社の軸を作ること。経営陣と多くの社員で議論を交わし「幸せを一杯に。」などの経営理念を定めた。 最大の課題は、外食チェーンの基本である店内作業の改革だった。当時は個店ごとに経営している状態で、調理や接客の方法はバラバラ。肝心の味も店長らの感覚で決めていた。
売り上げレポートは2カ月後に本部に届き、リアルタイムで業績を把握できなかった。「通常の飲食チェーンがやっていることがほぼできていなかった」(最高執行責任者<COO>の大井裕之氏)。 そこで、改めて店内作業のマニュアルを作成し、調理や提供の方法、接客の手順まで、細かな点を少しずつ統一していった。 それでもおでんの具材がなくなってしまう。ぼた餅の調理が間に合わない。ホールの片づけや皿洗いも進まない。そんなトラブルは日常茶飯事だったようだ。
そのほか、朝定食の鮭もスタッフがさばくなど、仕込み作業はほぼ各店舗で行っていたが、一部の作業を外部の仕入れに切り替え、効率化を進めた。店舗のキッチンやテーブルなどのレイアウトも統一していった。 こうして数年をかけ、着実にチェーンとしての仕組みを整え、現在の72店まで規模を広げてきた。さまざまな客層に幅広いシーンで利用される資さんの強みは、ファンドの傘下で改めて磨き直したものだった。 ■「アジアの資さん」になれるか
全国展開にあたっては、マーケティングなどもこれまでと違ったスケールで行う必要がある。また、3年間で140店舗ほどの出店計画を踏まえると、人材の採用や教育についてもスピードが求められる。 資さんは今後、ファミレスからの業態転換に加えて、さらなる拡大も視野に入れている。「ゆくゆくは海外にも出店していきたい」(佐藤社長)。すかいらーくの谷会長も「資さんうどんの甘めの出汁は東南アジアなどで受け入れられる」とみている。
ユニゾン・キャピタル傘下で規模拡大への態勢を整えたように、今度は全国展開、海外進出に向けてすかいらーく傘下で成長を遂げられるか。ここからが本番だ。
金子 弘樹 :東洋経済 記者