資さんうどん、「北九州のうまさ」で狙う列島制覇、創業者の死を越えて、うどん一杯に込めた本気
一方で、佐藤社長は「店舗のオペレーションはもう一段の進化が必要だ」とも語る。すでに注文用のタブレット端末は全店舗に導入。席を自動で案内するシステムも関西で導入した。新店などで案内が遅いことについて、客からのクレームが多かったからだ。そのほか、キッチンやレジ周りでも改善を進めていく構えだ。 ■北九州の地元では「資飲み」利用も 今後出店を進める関東圏では、トリドールホールディングスの「丸亀製麺」、吉野家ホールディングスの「はなまるうどん」など、讃岐うどん系のチェーンが人気だ。これらのチェーンはセルフサービスで、手軽に利用できる点で多くの客の支持を得てきた。
資さんが競合と異なる面はいくつかある。まずは席で注文するフルサービスの形式であること。メニューも豊富で、ランチだけでなく、カフェのように利用されることもある。 深夜営業や24時間営業の店舗もあり、アルコールの需要もある。北九州では「資飲み」という名前で親しまれているほどだ。さまざまな客層に、幅広いシーンで利用されていることこそ、資さんの強みといえそうだ。 すかいらーくの谷真会長は「資さんは今後3年間で、現在の3倍の210店舗まで拡大したい」と期待を寄せる。全国展開を進めても、居心地のよさ、使い勝手のよさを武器に集客できるかが、ポイントになるだろう。
外食大手グループに参画し、全国展開を進める。順調な成長ストーリーにも見える資さんだが、実はほんの数年前まで苦難にあえいでいた。 試練となったのは、創業者の大西氏が2015年に亡くなったことだった。精神的な柱を失い、会社として何を大事にしていくのか、出店をどう進めるのかなど、社内の意見もバラバラになってしまった。 「一歩を踏み出す勇気がなくなっていた」――。ユニゾン・キャピタルの要請で就任した佐藤社長は、2018年当時をそう振り返る。当時の店舗数は36店で北九州に集中していた。規模拡大はおろか、新メニューの開発・提供サイクルも失われていた。今あるものを守ることに必死だった。