一目惚れからの即決購入! ランチア・フルビア・クーペ(1) ラリーで活躍したV4エンジン
今も現実的な価格で探せるフルビア・クーペ
このランチアの写真が、純白のホリゾントを背景に、こうこうとライトが照らすスタジオで撮られていたら。中古車サイトの一覧で、筆者の目にとまることはなかったはず。 【写真】ラリーで活躍したV4エンジン フルビア・クーペ 現代技術で復活するランチア ベータも (102枚) 淡いブルーに塗られた小さなクーペは、青々とした牧草地が奥に広がる、葡萄棚を背景にしていた。イタリア南部、カンパニア州にさす陽光のもとで。ひと目で心が奪われたことは、説明するまでもない。 気が付けば、グレートブリテン島に連れてきたいと考えていた。雨で霞んだ海岸線を望む、うねる道を走りたいと願っていた。 筆者は、生粋のイタリア車ファン。ランチア・マニアだと思っている。ストラトスやラリー037、デルタ・インテグラーレなど、虜になってきたモデルは数多い。しかし2+2のフルビア・クーペは、これまで不思議と心に響くことがなかった。 とはいえ、エレガントなスタイリングに特徴的なV型4気筒エンジン、ラリーで活躍した歴史を持つ割に、現実的な価格で売買されていることが気にはなっていた。この1974年式の1台は、換算すると当時7900ポンドで売りに出ていた。
バンク角13度のV4エンジン 高性能なHF仕様
フルビア・クーペは、1965年に発売。スタイリングを担当したのは、ランチアのピエロ・カスタニェロ氏で、スクエアなボディのサルーン、フルビア・ベルリーナと多くの技術を共有していた。 バンク角13度の狭角なV4エンジンは、チェーンで駆動されるツインカムで、アルミニウム製のヘッドを採用。搭載位置はフロントアクスルより前で、45度も傾いている。排気量は、当初81psの1216cc。1231cc、1298cc、1584ccと、徐々に拡大していった。 フロントアクスルへ駆動力を伝えるトランスミッションは、オールシンクロの4速マニュアル。前後とも、ディスクブレーキが備わった。 サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがビームアクスル。どちらも、横向きに配置されたリーフスプリングが支える。 1216ccに追加された、高性能仕様の初期のHFには、専用カムとマニフォールド、キャブレターが組まれ、最高出力を7ps上昇。ドアやボンネットなどを中心に125kg軽量化され、車重は825kgに仕上がっていた。 1969年には、5速MTが組まれた1.6LのラリーHF仕様が登場。7インチの大きなヘッドライトが与えられ、「ファナローネ」という愛称で呼ばれた。最高出力は116psで、0-100km/h加速は9.9秒。1258台の限定で、大きな話題を集めた。 ヴァリアント1016という名の、更なる特別仕様も存在した。専用カムと高圧縮比化で、15psが上乗せされていた。