一目惚れからの即決購入! ランチア・フルビア・クーペ(1) ラリーで活躍したV4エンジン
期待どおり素晴らしい状態だった1台
そして、1969年はランチアがフィアットに買収された年だった。新たな資金を獲得し、フルビア・クーペは、1970年にシリーズ2へアップデートしている。5速MTが標準になり、デュアルサーキット・ブレーキを獲得。ステアリングラックにも変更を受けた。 一方、フィアット由来の部品が多く採用されてもいた。内装はダウングレードし、HF仕様はボディパネルがアルミではなくなった。英国仕様は、基準に合わせてヘッドライトの位置も変更されていた。それでも、ランチアのクーペがあるだけマシといえた。 スタイリングとインテリアが僅かに新しくなった、進化版となるシリーズ3は1973年に登場。だがその前年、1972年には、フィアット・エンジンのランチア・ベータ・クーペが発売されている。フルビアは、1976年に生産が終了した。 これらの情報は、2017年9月に、ナポリへ向かう飛行機で確認したもの。ベスビオ山の麓を巡り、アマルフィ海岸に見惚れながら、ジェラートの甘さを堪能した。夢に描いたような、フルビア・クーペと出会うための旅だった。 対面した念願のランチアは、期待どおり素晴らしい状態だった。ブルー・アニャーノの塗装は12年前に塗り直され、艶を保っていた。目立ったサビもなかった。内装は使い込まれた感があったものの、基本的に無傷。発進しても、怪しいノイズは放たなかった。
オイルやフルード類、消耗部品は交換
もちろん即決。7500ポンドに値切って、自分のクルマになった。650ポンドを追加し、オランダ・アムステルダムまでの輸送を依頼。3週間後にそこで再開し、フェリーに載せてグレートブリテン島へ渡った。 輸入の手続きは簡単だった。関税はかからず、英国歳入関税局にクルマのことを報告し、運転免許庁(運輸局)に車検証明を提出した程度で済んだ。 英国では、40年前のクルマには車検が免除されている。それでも、自主的に精密な点検は受けることにした。法律上は、クラシックカーは走行可能な状態に保つ必要がある、と記されるだけだが、トラブルは未然に防ぐべきだ。 筆者が作業を依頼したのは、ランチアを専門とするカークラフト・スコットランド社。経営者のニール・ジェフリー氏は、フルビアでラリーに出場した経験を持つ。 点検を終えた彼は、目立った不備はないと告げてくれた。しかし、オイルやフルード類の交換は必要だった。エンジンとトランスミッション、サスペンションのマウント、点火プラグ、ドライブシャフトブーツ、ブレーキラインなどは新調された。 燃料フィルターと燃圧調整のレギュレーターはオーバーホールされ、古いアンダーコートは剥がし再処理。バルブタイミングとクリアランス、2基のソレックスキャブレターも調整された。ガレージを出ると、めっきり走りがスムーズになっていた。 この続きは、ランチア・フルビア・クーペ(2)にて。
リチャード・ウェバー(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)