ダウン症のある娘が、マチュピチュ遺跡の3時間往路でブチキレながらも笑顔になった理由
突然のハプニングに娘は冷静に対応
夕食は行きたい店を決めていた。クスコにも素晴らしい日本食レストランがあった。1日の気温差が激しく、夕方になると店内でダウンジャケットを着ていても寒いくらいだったため、温かい天ぷらうどんが冷えた体に染みた。 海外に行ったのに現地のものをなぜ食べないのか、と思うかもしれないが、娘は食べ慣れたものを好む傾向があり、食事は娘にとって何よりも優るバロメーターだったため、今回の旅では、現地のものと日本食とのバランス取りながらお店を選んでいた。実際にお店に行ってみると同じ日本食でも現地のアレンジを効かせた料理に出会うことが多く、(例えばペルーのカツ丼にはスパイシーなソースがかかっているなど)色々な国で日本食を味わう楽しさも今回の旅で知った。 その日は、珍しく(!?)何事もハプニングなく、一日を終えようとしていたその時だった。娘が注文したカツ丼が運ばれ、さあ食べようという時に、突然電気が消えて、店の中が真っ暗になった。しかし、外を見ると、うっすら街灯はついている。どうやら、この店のビルだけが停電したようで、復旧もいつになるか分からないとのこと。店の人が、笑顔でキャンドルを各テーブルに配っている。きっと、よくあることなのだろう。よりによって、何もこのタイミングで停電にならなくても……と心配して娘を見ると、本人は静かに落ち着いていた。 以前なら驚いて怖いと泣き出し、食事どころではなくなるところだが、この旅で一段と逞しくなった娘は、私のスマホのライトを頼りに、文句も言わず黙々と食べ始めた。「停電、怖くないの?」と野暮なことを聞いた私に「怖いよ、でも仕方ないよ。我慢して食べる」と娘。親バカ過ぎるかもしれないが、そんな娘の成長がうれしくて、停電のハプニングすら今となっては良い思い出だ。 結局、私たちが店にいる間は停電が復旧することはなかったが、無事に会計を済ませ、ホテルへ戻った。そして、日本食店でテイクアウトした白飯でおにぎりを作り、翌朝いよいよ世界遺産マチュピチュへと出かけることとなった。