ヤンキース田中将大を悩ますメジャーのシフト守備
古くは、“王シフト”や、ブラウン監督が、広島、楽天時代に外野手を一人減らして内野に置いたケースはあったが、メジャーでは、左打者に対しては、内野4人が全員右側に偏ったり、右打者に対しては二塁手が右サイドから消えたり…。内野陣の動きに準じて外野にも動きがある。当然のように、この守備態勢にはリスクがある。当たれば万歳だが、反対方向に打球が転がったり、盗塁や併殺プレーでカバーしきれなかったりすることも。昨今のメジャーの投手は、守備位置を配慮した配球も要求されているということなのだ。 ヤンキースの黒田博樹投手は、25日のエンゼルス戦では極端なシフトの逆を突かれた格好で、凡打がヒットとなる不運を経験した。いわゆる、シフトの弊害だ。後日、黒田は、「難しい所ですよね。チームの方針ですから。プラスに働くこともありますし」と振り返っている。黒田や田中らツーシームやカットボールを使ってゴロを打たせるタイプの投手には、命取りになることもある。ヤンキースでは、チームの“決め事”としてゲームプランを組み立てるが、一方で投手陣からの意見も奨励されているようだ。 2012年にレイズに在籍し、現在はレッドソックスで中継ぎを務める右腕のバーデンホップは言う。「レイズに移籍した時、最初の出番で極端なシフトに出会って面食らったけれど、シフトに関して僕はエンジョイ派だ。野球は確率のスポーツだから。データを検証して、打球の落下点となる確率が高い所の守備を手厚くする考え方は、理に叶っていると思う。結果よりプロセスを大事にするということだ」 バーデンホップは、シンカーとスプリットが持ち玉という典型的なグラウンダー(ゴロを打たせる投手)だから、シフトの影響をモロに受ける。レイズでは、万が一シフトが仇になって打たれた時、マドン監督以下、コーチ陣から咎められることは一切なかったという。そして、守備位置を確認しながら、打者のヒットゾーンが、ライン寄りにならないようにシフトに沿うようなコースに投げる技術を身につけた。