ソフトバンク「外れ外れ1位」甲子園出場ゼロの高卒剛腕・村上泰斗って何者? 涙のドラフト全内幕…恩師は「本当に評価されているのか不安だった」
想定質問集を村上に手渡した
そして、24日。ドラフト前にグラウンドで顔を合わせたときよりも念入りに髪をセットしたと思しき村上の左隣りには、スーツ姿の岡本が座った。ネクタイ、シャツのストライプ、スーツともに濃紺で統一された出で立ちだった。 「各球団のチームカラーってあるじゃないですか。黄色やったら阪神ちゃうかとか、赤やったら……とか。それで『村上の希望の球団はここだったんじゃないか? 』とか言われるのは嫌やなというのがあったので。オーソドックスな色で、っていうのがありました。あのネクタイ、去年までずっと一緒にやってくれた、前部長からのプレゼントだったんです。『勝負のときに着けてな』と言われとって。特定の球団と色も重ならないし、その思いもあったので、着けましたね」 報道陣から投げかけられるであろう定番の質問をまとめ、「聞かれたらなんて答えるか考えとき」と、事前に村上に手渡した。岡本曰く「村上は話すのが下手な方ではない」ため、大きな不安はなかったが、指名直後の高揚感に満ちた状況でもつつがなく答えられるように、という親心である。 自身の一張羅を含め、場は整えた。それでも頭をかすめるのは、「本当に評価されているのか」という不安である。不安から来る緊張感が押し寄せる中、ドラフト会議の幕が開く。岡本の心が晴れるのに、そう時間はかからなかった。 目玉遊撃手だった明大の宗山塁、地元選手でもある二刀流の福岡大大濠の柴田獅子の抽選に敗れたソフトバンクが、「外れ外れ1位」で村上を指名したのだ。 <つづく>
(「甲子園の風」井上幸太 = 文)
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