ソフトバンク「外れ外れ1位」甲子園出場ゼロの高卒剛腕・村上泰斗って何者? 涙のドラフト全内幕…恩師は「本当に評価されているのか不安だった」
今年も多くのドラマが生まれたプロ野球ドラフト会議。神戸弘陵・村上泰斗は「上位指名候補」と呼ばれていたが、恩師・岡本博公監督は本人以上に緊張と不安に襲われていたという。以前から村上を取材し、2年時には取材していたスピードガンで「152キロ」を計測してちょっとした騒動を起こしてしまった経験を持つ記者が見た、涙の1位指名までの全内幕! <全2回の前編/後編を読む> 【貴重写真】大谷17歳、超細いのに甲子園で衝撃の特大HR、ぷっくり捕手な村上17歳。ガリガリな柳田、ヤンチャそうな学ラン姿の張本、実は投手だった王さん…名選手140人超の高校時代を見る もしかすると、隣にいる教え子に負けないくらいの緊張感だったかもしれない。 「緊張感、ありましたよ。めちゃくちゃあった」 神戸弘陵を率いる岡本博公が、苦笑交じりに振り返る。 10月24日に開催されたプロ野球ドラフト会議。候補選手たちにとって、幼いころから抱いた「プロ野球選手になる」夢の実現が左右される運命の日である。同時に、手塩にかけて育ててきた指導者にとっても、教え子の門出を祝い、ともに過ごした日々に一区切りが付く特別な一日だ。 今年、神戸弘陵は村上泰斗というドラフト候補を擁していた。最速153キロを記録する直球は、好調時にはプロ野球選手の平均値を大きく上回る2600回転をたたき出すなど、スピード、質ともに出色。甲子園に縁はなかったが、その潜在能力から、「上位候補」「2位以内に消える」とささやかれてきた。 各球団が、指名の可能性がある選手に提出を求める「調査書」は、全12球団から届いた。だが、岡本の胸中から不安が消えることはなかったそうだ。
7年前の冷や汗の記憶
「一応、『上位候補』という風に言われてきてて、スカウトさんたちの評価を聞いても、(指名が)あるんだろうなって思いがありながらも、他の上位と呼ばれている選手たちと違って甲子園に出ているわけでもない。そういった実績のところで、どこまで評価されるのかな、という不安がありました」 不安の一端には、過去の経験もあった。岡本は7年前にも教え子のドラフトに同席している。現在はオリックスでプレーしている東晃平だ。 当時は9球団から調査書が届き、岡本も「支配下(指名)があるもんやと思っていた」が、支配下ドラフトでは名前が呼ばれず。辛くも育成2位指名を受けて、プロ入りが叶ったのだった。 この記憶があったため、周囲から高評価を聞かされても、「ドラフト当日を迎えてみないことにはわからない」という思いがぬぐえなかったのだ。 2017年、東のドラフトは報道陣の数も限られたため、校舎内の会議室を会見場としたが、今回は上位候補の前評判があったため、マスコミ各社の取材希望が殺到。会議室では収まり切らないため、野球部のグラウンドの裏手にある、学生寮の1階にあるホールを会見場に仕立てた。 ドラフト当日の会見の様式も、毎年多くの指導者、チームの悩みの種になる。 あらかじめ選手が同席して、報道陣とともにドラフトの経過を見守る形か、別室で待機し、指名を受けてから会見場に現れる形か。東のドラフトでは、「支配下指名の間は別室で待機、育成ドラフトに入ってから、東本人も同席した」(岡本)が、今年はドラフト開始から村上本人も同席する方式を採った。もちろん、上位候補の評判があったからでもあるが、チームを預かる者としての譲れない思いもあった。 「寮はグラウンドの裏にあるので、現役の部員や他の3年生たちもすぐ近くにある室内(練習場)で待機できるんです。保護者もたくさん来てくれましたし、OBも来てくれたので、一体感というか、同じ空間でドラフトを見たいなというのがあって。やっぱり一生に一度の機会かもしれないので、みんなで共有したいなというのがありました」
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