欧米がウクライナへの軍事支援強化 ロシアは“核の脅し”強める
日テレNEWS NNN
ロシアとウクライナの争いをめぐり、大きな動きが続いています。アメリカに続きイギリスもウクライナに長距離ミサイルを供与しました。一方、ロシアは核兵器使用のハードルを引き下げ、「核の脅し」を強めています。
ウクライナから発射された、アメリカ製の長距離ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」とされる映像が19日に公開されました。 ロシア国防省によると、19日にウクライナ軍はATACMSを使ってロシア西部ブリャンスク州の軍事施設を攻撃。ATACMSによるロシア領内への初攻撃に踏み切ったのです。 緊張の高まりを懸念し、ロシア国内への「ATACMS」の使用を認めてこなかったアメリカのバイデン政権ですが、その姿勢を一転させました。 さらに20日には、ウクライナ軍がイギリス製長距離ミサイル「ストームシャドー」を使い、ロシア領内の軍事目標を初めて攻撃したと報じられました。 アメリカもイギリスも、北朝鮮兵がロシア側にたって参戦したことへの対抗措置として、方針転換に踏み切ったとされています。
トランプ政権発足を前にしたウクライナへの軍事支援のてこ入れ。ロシアが攻勢を続けるウクライナ東部の戦線への対応をめぐっても、アメリカは大きな方針転換を行いました。 それが対人地雷の供与です。バイデン政権は民間人に無差別に被害を与えることなどから、これまで供与に消極的でした。供与する対人地雷は一定期間を過ぎると爆発しなくなると説明していますが、ロシア軍の攻勢に“禁じ手”を余儀なくされた形です。
一方のロシア側でも大きな動きがありました。19日にはプーチン大統領が核兵器使用のハードルを事実上引き下げた新たな核兵器使用の基本方針、いわゆる「核ドクトリン」を承認し、「核の威嚇」を強めています。 西側の軍事支援の方針転換がウクライナの戦線にどのような影響を与えるのでしょうか。
■核の使用 プーチン大統領の“本気度”は…
鈴江奈々キャスター 「モスクワ支局の平山晃一記者に聞きます。欧米がウクライナへの軍事支援を一層強化した中、今後、プーチン大統領はどう出るのでしょうか?」 NNNモスクワ支局長 平山晃一記者 「まだプーチン大統領は公にコメントしておらず、実際にどのような対抗措置に踏み切るかは不透明です。ただ、即座に核兵器を使う可能性は低く、核による脅しを一層強め、緊張状態を高めるものとみられます」 「プーチン大統領がアメリカの方針転換を受け、すぐに核兵器使用のハードルを引き下げましたが、これは通常兵器での攻撃もロシアの主権に対する重大な脅威となれば核で報復する権利があると警告し、脅す意味合いがあるとみられます」 「ロシアは今年に入り核演習を繰り返し実施していますが、脅しのもうひとつのカードとして、ソ連崩壊後としては初めてとなる核実験に踏み切る可能性も取り沙汰されています。また実際の核使用のハードルは非常に高いとみられる中、ヨーロッパのインフラなどへの破壊工作を、より一層活発化させるとの見方もあります」 鈴江キャスター 「事態がエスカレートしていくと、今は脅しと位置づけているものであっても、その次の段階に進む恐れはあるのでしょうか?」 平山記者 「実際、プーチン大統領が核使用に踏み切るレッドライン、いわゆる『越えてはいけない一線』というのは、これまでも非常にあいまいな状態でした。ウクライナの越境攻撃に加え、今回アメリカなどが長距離ミサイルの使用を容認したことで、これまでレッドラインなのではないかと言われていた一線を欧米などが次々と越えてきました。プーチン大統領も対抗措置には苦慮することになりそうで、このレッドラインをどこにひくのか、欧米との駆け引きも続きそうです」 「来年1月にトランプ次期大統領が就任すれば、停戦交渉へ向けた圧力も強まるとみられ、ロシアもウクライナもそれまでに少しでも有利な立場を築こうと激しいせめぎ合いが続きそうです」