感染者の増減だけを伝えることに疑問を持っていた――日テレ・藤井貴彦の「仕事」
日本テレビアナウンサー、藤井貴彦は今年、50歳になる。「心まで新型コロナウイルスに負けてはいけません」――コロナ禍、ニュース番組で語りかけた連日のメッセージは、多くの人々の胸に響いた。昨年末、「好きな男性アナウンサーランキング」に初登場し、3位にランクイン。なぜ今、藤井の言葉に癒やされるのか。看板番組がスタートして11年、東日本大震災から10年。真摯に、実直にニュースと向き合い続ける男の本音を聞いた。(取材・文:山野井春絵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
“自粛してください”と言ったことは一度もない
昨年末の「好きな男性アナウンサーランキング」(オリコン)で、日本テレビの藤井貴彦アナウンサーが初登場にして3位に躍り出た。 人気急上昇のきっかけをつくったのは、夕方のニュース番組『news every.』で、藤井が昨年春から毎日発した視聴者へのメッセージとされる。 「命より大切な食事会やパーティーはありません」 「今大切なのは、生活のために開けているお店への批判ではなく、お世話になってきたお店への応援ではないでしょうか」 「諦めないでもう一度基本に戻って(感染防止を)徹底する。これしかないんです。やりましょう」 連日S N Sで「胸に響く」「今日も藤井アナの言葉に救われた」などの投稿が相次いだ。こうした呼びかけ、メッセージはどのようにして生まれたのか。 「私はもともと、感染者数の増減だけを伝えるということに疑問を持っていました。単に不安を煽っているだけではないか。伝え方を変えたらどうだろう……本番中、時間を調整するために話すタイミングで、ぽろっとコメントしたことがありました。そこからです」 藤井のスタンスは、要請・批判ではなく、「皆の努力がこの結果を生んでいる」という「応援」だ。これをメッセージの基本とした。 「批判はいくらでもできます。しかし、大多数の人々は、感染拡大を抑えるため、すでに自粛行動を続けている。本来、ライトを当てるべきは、そうした方々だと思ったのです。『皆さんの行動があってこそ、スクランブル交差点には人がいないんです』、そう伝えれば、繁華街の映像を見ても『私が今やっていることは間違いではない』と安心できるのでは」 いくつもの報道番組が新型コロナウイルスを取り扱い、識者やコメンテーターの意見も多面に及んだ。藤井はさまざまなコメントに対して、「自分はどう思うか」をスマホのメモ画面に書き続けていったという。