光合成を行う生物はいつ誕生したのか?地球生命史年表が書き変わる大発見に迫る!
酸素生成型光合成の起源が見えた!
──先ほど「ハイドロバクテリア」にも光合成をする微生物がいるとお聞きしましたが、そちらは直系ではないということですか? はい、誰かからもらった光合成遺伝子を自分のものにして、進化したことになります。昔はハイドロバクテリアに属する紅色細菌や緑色細菌が光合成細菌の祖先的な存在かもしれないと思われていましたが、今回の解析ではそれが否定されました。直系で光合成機能を受け継いでいるのは、シアノバクテリアをはじめとするテラバクテリアIの系統です。 ただし、現存する全光合成生物の共通祖先(図の☆マーク)が光合成の起源ではありません。テラバクテリアIの兄弟や従兄弟みたいな微生物がいたとしても、その系統はすでに絶滅しているので、遺伝情報を追うことができません。光合成という機能自体は、この共通祖先よりも前から存在したはずです。 また、この共通祖先が持っていた光合成遺伝子を解析した結果、酸素非発生型の光合成をしていたことがわかりました。その遺伝子がのちに起こした変異を解析すると、やがて水から酸素を生成できる構造、すなわち酸素発生型の光合成ができる機能、を持つようになります。 シアノバクテリアが生まれたのは、その機能が登場してからしばらく経ってからです。ですから、最初に酸素発生型の光合成を始めたのはシアノバクテリアではありません。前の世代からそれを受け継いで、その能力を極めたのがシアノバクテリアだったということです。 ──酸素発生型が非発生型よりも後で進化したことはわかったわけですね。 そういうことになります。しかしここまでの話では、光合成そのものの起源にも、酸素発生型の起源にも触れていません。今回の研究ではそれも明らかになったので、じっくりご説明しましょう。 いよいよ次の記事「なぜ生物は酸素を作り始めたのか。最初に光合成をした生物は誰? 地球生命史が変わる大発見!」では、酸素発生型光合成、そして光合成生物の起源について迫ります! ---------- <共同研究者紹介> 海洋研究開発機構 塚谷祐介 産業技術総合研究所 西原亜理沙 (現所属・理化学研究所) 中央大学 浅井智広 ---------- 取材・構成:岡田仁志 取材・図版協力:国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 撮影:神谷美寛・講談社写真部
延 優(国立研究開発機構 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 超先鋭研究開発部門 超先鋭研究開発プログラム)