見えない光をとらえる66個の目 ── 「アルマ望遠鏡」って何?
皆さん、夏の夜空を見上げていますか? 夕方以降は暑さも和らぎ、ちょっと外に出て夜空を眺めやすい時期ではないでしょうか。都会に住んでいても、晴れていれば1つくらい星が見えるはずです。 星はなぜ見えるのかというと、星が光を出しているからですが、もう少し正確にいうと、人間の目で見える光を出しているからです。私たちの目は、ある温度以上の熱いものが放出している光しか見ることができません。しかし、宇宙にはもう少し低い温度のものが出している光も存在します。この光は人間の目では見ることができませんが、とても大切な情報をもっており、多くの天文学者はこの光を調べています。例えば、銀河の誕生の様子、恒星の周りで惑星ができる様子、宇宙に生命の材料がどのくらいあるか、といったことについては、この「目では見えない光」を詳しく調べる必要があります。 ただ、この目で見えない光は水蒸気があると吸収されてしまい、見えにくくなってしまうという性質があります。さらには、倍率(解像度)を上げることも大変で、目で見える光の望遠鏡よりも巨大な望遠鏡で光をとらえなければなりません。今日ご紹介するのは、このような、一筋縄ではいかない、やっかいな光を観測しているもの凄い望遠鏡です。
66の凜とした眼差し
凄い望遠鏡はその名をアルマ望遠鏡、正式には、「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」といいます。ミリ波、サブミリ波とは人間の目には見えない光の一種で、電波の仲間です。アルマ望遠鏡は、電波を受けとる望遠鏡のため、鏡ではなくパラボラアンテナを使用しています。
アルマ望遠鏡は、日本をはじめとする21の国と地域が参加する国際共同プロジェクトとして、南米チリ共和国のアタカマ砂漠の高原に建設されました。 東京の年間降水量が1500ミリ程度なのに対し、アタカマ砂漠は100ミリ以下と年間を通してお天気が良く、乾燥していること、標高が高く水蒸気の影響が少ないことから、目では見えない光の観測に適していると判断され、この地が選ばれました。 最大の特徴は、66台のパラボラアンテナで構成されており、これらのアンテナが得た情報を組み合わせることで、1つの巨大な望遠鏡として働くことです。1つ1つのパラボラアンテナは運搬台車を用いて移動が可能で、アンテナ間隔を約18キロまで広げることができます。このように複数の電波望遠鏡を組み合わせることで、1台の巨大な望遠鏡で光をとらえるのと同じ倍率を得ることができます。