なぜ夕方のニュースにはグルメ番組が多いの?「午後6時15分」地方局の戦い
午後6時15分。「さて、今日は…」先ほどまで硬い面持ちでニュースを伝えていたアナウンサーの表情が緩む。スタジオの空気感がガラッと明るくなる。関東地方で夕方のニュースを見ていると、このまま「横浜激安ランチ特集!」や、「激盛りメニューを探せ」など、この前もどこかの番組で見たようなグルメ特集が始まる。 私は以前地方局でアナウンサーをしていて、東京での制作現場も見たことがある。テレビを見るのが好きだし、グルメ特集はいくら見ても飽きない。むしろ、裏側の苦労を想像しながら見るので、「ああ、これは大変だっただろうな」とかブツブツ言いながら見ている。 だが先日、こんなショッキングなことを言われた。「夕方のニュースって、なんでいつもグルメ特集なの?面白くない」。実は、そこにはテレビ局の譲れない理由がある。
「午後6時15分から7時」は地方局の「顔」
夕方のテレビのニュースはずっと全国放送をしているわけではなく、地方局が流す番組に切り替わる時間がある。民放では政治や経済など、日本全国に関係しているニュースは、全国放送として午後5時50分から午後6時15分までに放送されている。 そして「午後6時15分から午後7時」のこの時間帯は全国放送ではなく、ほとんどの地方局が独自制作したニュース番組を放送する数少ない時間帯として設けられている。よってこの時間帯、関東地方ではキー局がグルメなどの関東ローカルの身近な話題を放送することが多くなり、一方で関東以外の全国各地の多くの地方では、地元のテレビ局が制作する地元ならではのローカルニュース番組が流れている。 7月31日の埼玉県のTV欄を見てみよう。関東では午後4時から午後7時までニュース番組を放送している民放テレビ局4つのうち、TBSテレビを除く局がグルメに関する話題だ。一方この時間帯、関東以外の地域では、この時間のために必死に何日も前から取材してきた珠玉のニュースを放送していく。報道機関たる地方テレビ局の顔となるニュース番組が始まっていたのだ。