ウイリアムズF1、2024年の“大クラッシュ祭り”はマシン時短開発による「自業自得」とアルボン
ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンは、2024年マシンFW46の開発について、時間短縮を優先し車体重量軽減策を後回しにしたことで、クラッシュ時のダメージが増加したと指摘。「自業自得の損害」だったと振り返った。 【ギャラリー】巳年だからヘビのF1……ジョーダン197 ウイリアムズは2024年シーズンを通して幾度となくクラッシュに見舞われた。またFW46自体も、開発が進み軽量化が行なわれるまでは車両最低重量の798kgを達成できず、1周あたり0.45秒を失っていた。 重いマシンの原因のひとつは、サスペンションなど一部のコンポーネントを軽量なカーボンファイバー製から重い金属製に変更したことにあった。 これには、ウイリアムズが製造システムの近代化を目指し、その年のマシンの製造工程を変更したため、パーツ投入が大幅に遅れたことが関係している。金属製パーツはカーボン製パーツよりも短時間で製造が可能であり、ウイリアムズもその中で最大限の軽量化を試みたものの、それによる重量増は避けられない。 シャシー総重量は2023年比で14kgの軽量化に成功したものの、それでも最低重量を下回ることはできなかった。そしてパーツの重量が増せば、クラッシュ時にモノコックへ伝わる力も大きくなり、及ぶダメージも増える。 2024年シーズン序盤のオーストラリアGPでは、アルボンがフリー走行で大クラッシュを喫し、シャシーが再利用不可能なほどのダメージを負い、スペアもなかったため、身代わりでチームメイトのローガン・サージェントが欠場を強いられた。 その後もウイリアムズは、アルボン、サージェント、そしてシーズン途中からサージェントの後任を務めたフランコ・コラピントが何度もクラッシュを喫した。 これについて何か特別な原因があったのかと訊かれたアルボンは、次のように説明した。 「色々な要因が関係している」 アルボンはmotorsport.comの独占インタビューでそう語った。 「ドライバーのミスもあるし、色々な問題が重なっている」 「マシン周りの問題とは言わないけど、例えば(アルボンがウエットの予選Q3でクラッシュを喫した)ブラジルは、ドライバーの問題みたいに見えるけど、実際はそうではないんだ」 「ただ、僕らはシステムを変えて、非常に厳しい部分があった。もっと良い仕事ができたはずだし、避けられたと思う。そういうことも少しはある」 「例えば、今年の開幕を例に取ってみると、僕らはかなりの数のモノコックを使った。メルボルンもそうだし、鈴鹿もそうだった」 「でも実際よく考えてみると、重量問題そのモノにも通じるモノなんだ」 「マシンにはカーボン製ではなく金属製のパーツがいくつかあった。それが、モノコックが壊れる原因になっていたんだ」 「だから、ほぼ自業自得の怪我みたいなモノだ。レース1から後手に回ってしまったということがあったんだ」 アルボンの指摘についてmotorsport.comがウイリアムズでチーフエンジニアを務めるデイブ・ロブソンに訊くと、次のように答えた。 「そう、それはある程度事実だ。その因果関係が正確かどうかは分からないが、現在では全てがカーボン製になった。当初からカーボン製にすべきだった金属製パーツがマシンに搭載されていたのは間違いない」 「シャシーに伝わる負荷は間違いなく変化する。それ(金属製パーツが使われていたのは)はフロントサスペンションの部品だ」 「その理由は、金属製のトラックロッドを設計する方が、カーボン製パーツを作るよりもずっと早くできるし、機械加工も早いからね」 「一度後れを取ると、そのぶんを取り戻すことになる。トラックロッドのようなモノであれば、パーツ自体にわずかな質量的損失を被ることになる」 「しばらくはマシンに搭載していたが、すぐにアップデートを行なった。フロントサスペンションのコンポーネントの一部をそういうモノだった場合、大きな衝撃を受けた時にシャシーにかかる負荷が少し変わってくる。それが序盤の問題のひとつになったと思う」
Alex Kalinauckas