「聡太とひふみんの文化論」やさしさだけでは生きられない ー日本人と将棋
公式戦のデビュー以来、不敗で連勝記録を塗り替えた天才中学生棋士・藤井聡太四段の登場で、将棋界に熱い視線が送られています。2日に連勝記録は止まりましたが、今後もタイトル戦での活躍が期待されるなど、まだまだ注目は続きそうです。 建築家であり、多数の建築と文学に関する著書でも知られる名古屋工業大学名誉教授、若山滋さんが、「将棋は日本の誇る格闘技・聡太とひふみんの文化論」と題し、日本の将棋文化がもつ意味と現在将棋界から起こったさまざまな現象を考えます。 ----------
ついに連勝が止まった。 それにしても、中学生藤井聡太四段の快進撃によって、レジェンド加藤一二三九段が脚光を浴びたところが面白い。加藤九段は昔から少し変わってるなとは思っていたが、今それがテレビで受けて出ずっぱり。天才・聡太が、タレント・ひふみんを生むとは、人生何が起きるか分からないものだ。 筆者は子供のころ将棋が好きだった。イギリスとアメリカに滞在中は、チェスの仲間に入れてもらって溶け込めた。似ているので、将棋の好きな人はすぐに覚えられる。今は囲碁に凝っている。そういうもの(ボードゲーム)が好きなのだ。テレビゲーム(ゲーム機、スマホを含め)に夢中になる子供(いや大人も)を批判できない。 ボードゲームは一種の格闘技であろう。 人間は、戦争はやりたくないが、戦うことは好きなのだ。 特に格闘技は人間形成の役に立つ。 「ルールのもとに一対一で相対する」ことは人間関係の基本である。社会的地位や経済格差などはまったく無視される。つまり絶対自己がむき出しになるのだ。そして覇気と忍耐と、ある条件下で最善の方策を探ることと、相手に対する尊敬の念を学ぶ。反対意見もあるだろうが、日本人は、柔道・剣道・空手のうち一つと、将棋・チェス・囲碁のうち一つを修得すべきではないか。殴り合いや殺し合いなど残忍なテレビゲームにハマることも減るだろう。若者には精神の陶冶となり、高齢者にはボケ防止となる。 人間はやさしさだけでは生きられないものだ。