『アンメット』杉咲花&若葉竜也、芝居に見えない異次元の役作り Pに与えた“初めての体験”
――どんな提案に「なるほどな」と感じましたか。 印象的だったのは2話の、病院を抜け出したサッカー少年の亮介と、ミヤビが一緒にサッカーをするシーンです。もともと「ミヤビならではの向き合い方ができないか」という杉咲さんの提案から作り上げられていったシーンなのですが、ボールを蹴り合うくだりと、その後、二人で話し合うくだりを、30分ほど長回しで撮影したんです。普通なら、一旦ボールを蹴るシーンでカットをかけて、仕切り直して、座って話すシーンを撮り始めるんですけど。「ボールを蹴り合う数十分のなかで、亮介の心が変わっていって、自分の本音と向き合うことができる」という感情自体をカメラに収めるために、杉咲さんの提案で、一連の流れを長回しで撮りました。亮介役の島村龍乃介くんが、左半側無視という状態を長い時間演じ続けて、苦しみが溜まっていったなかで見せたお芝居は抜群だったし、最初に転んでついた泥が、座っているときに自然と乾いているという時間経過のリアリティも、画に迫力を与えてくれて。杉咲さんが龍乃介くんの芝居を引き出しているのか、ミヤビが亮介くんの本音を引き出しているのか、その境界線が分からなくなるという感覚は、僕にとって初めての体験でした。 ■若葉竜也は“日本一台詞が台詞にならない俳優” ――ほかにも、米田さんにとって“初めての体験”はありましたか。 若葉竜也じゃないですかね。彼はもうすごい役者で、杉咲さんの魅力とも近いですが、“日本一台詞が台詞にならない俳優”だと思います。「三瓶役として、ベストな俳優だと思ったから」というシンプルな理由で若葉さんをキャスティングした通り、三瓶はすごくハマり役ですが、素の若葉さんが三瓶に近いからキャスティングしたという意味ではないんです。極端な話、別の役だったら、若葉竜也がその役にしか見えなくなる、そんな芝居をする俳優だと思うんです。 特に印象に残っているのは、6話で大迫(井浦新)に「あなたは医者ですか?」と聞くシーン。ミヤビ(杉咲)がてんかん発作を起こして、「こうすれば影が消えます」と、三瓶がとても大切にしている言葉を口にして、大迫が嘘をついていたことが分かって、三瓶は、もう信じられないくらいに怒っている。だから“ブチギレ三瓶”で行こうと話し合って脚本を作ったのですが、若葉さんは、想像を超える表現をしてくれました。三瓶の怒りがどこから来て、今どうなっているのか、明確に落とし込まれているから、あのお芝居が生まれるんだなと。