元近鉄の中村紀洋氏が浜松開誠館高コーチ就任「甲子園という夢舞台へ」
近鉄、中日などNPB5球団とメジャーのドジャースでもプレーした中村紀洋氏(43)の静岡・浜松開誠館高校野球部の非常勤コーチ就任の会見が1日、浜松市内の同校で行われた。 「子供達の夢に向かって、できる限り、これまで培った経験を元にサポートしていきたい。子供達にはスポーツを通じて生きる力を学んでもらいたい。野球はもちろん、夢は簡単にかなうものじゃない。でもあきらめずに逃げないでもらいたい。ひとつでも上にあがってもらいたいし、甲子園という夢舞台に立ってもらいたいなあと思っている。甲子園に出るまでが大事で、地道にやることがある、やればいけます、勝てます。プロへの夢も持ち、社会人など上の野球にも行ってもらいたい。メジャーリーグにも行って欲しい。夢を持った方が練習もする。夢は大きく持ってもらいたい」 中村氏は熱く就任の抱負を語った。 3月から同校の野球部監督に就任した元中日の外野手で08年夏の甲子園で常葉菊川を準優勝に導いた佐野心監督(50)と中村氏はプロの同期入団。ジュニアオールスターにも一緒に出ている間柄で、ここまで密に連絡をとってきたわけではないが、相通じる思いはあった。 中村氏は、2016年2月に講習を受けて高校、大学の指導者資格を回復しており、そのことや、小中学生に野球を教えるスタジオを開いていることを知った佐野監督が、「高校野球に興味がある? 一度、バッティングと守備を教えてくれない?」と打診。ここまで3度、直接指導に赴く中で、中村氏も、高校球児を教えることにやりがいを覚えたという。 「子供たちが見る見る進化するんです。凄いなあという第一印象と共に、これは楽しいな、もっともっと教えたいなと思えるようになった」 この日、正式に1年契約を結んだ。佐野監督は「できるなら毎日でも来て欲しいですが、中村氏も忙しいので、月に2、3回、週末に来てもらう形になるのではないか」という。 中村氏は、現在、兵庫の西宮でスポーツスタジオ「N’s method」を経営して子供たちを教えているため、時間のある週末に浜松を訪れるという指導スケジュールになる予定だ。 近鉄時代の2000年に本塁打、打点の2冠王を獲得、通算2101安打、404本塁打を生み出した中村氏の現役時代の打撃フォームは、足を上げ、バットを豪快にフルスイングする独特のものだったが、同校で教えているのは、シンプルな基本だ。 「難しいことを言っても理解されない。悩んでしまう恐れもある。コミュニケーションを取りながら、できる限りやさしく、簡単に指導をしよう、と心がけている。どんなバッティングフォームでもいい。一人ひとり個性があるので、そこをいじるようなことはしていない。癖をとる作業はしているが、基本さえできれば力強いスイングができる」 中村氏が教えているのは、「バットは上から下に振る」「体の回転を使うとバットがレベルに振れる」の2点。「幸い、まだ体が動くので」と、時には手本のバッティングを見せる。前日の30日にも練習参加したが、自らがバッティングピッチャーを務めながら教えた。 「遠くへ飛ばそうとしなくても勝手に飛ぶ」 まだ3度だけの指導だが、まるで魔法にかかったように選手の飛距離がアップ。この1か月でチーム本塁打数が10本増えた。 佐野監督も、「通算2000本以上のヒットと400本以上のホームランをプロで打った人が目の前にいるんです。選手の目がギラギラしている。これまで滅多にホームランのなかったチームが、この1か月で10本です。数字を見るだけでも明らかに効果が出ています」とノリ効果にビックリしている。 常葉菊川高時代は、機動力を武器に全国準優勝を果たしたが、このチームでは「バントをしない超攻撃的野球」を方針に掲げている。中村氏の指導は、佐野監督が求めるスタイルとピタリと合致するのである。 中村氏が教えているのは技術論だけではない。 「いかにプレッシャーがかかったときに平常心でプレーできるか、それを教えていきたい。プレッシャーがかかると、エラーしたくない、チャンスで打ちたいと体が固まってしまう。いかに試合で練習通りにできるか。メンタル面でもアドバイスさせていただきたい」