堀江貴文「退職金は“給与後払い”という悪しき習慣。働き盛りにもらうお金のほうが何倍も価値がある」
企業は退職金制度を福利厚生のようにアピールし、従業員もポジティブなイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし、表面的なイメージと裏腹に、退職金制度は企業にとって都合よくできているのです。堀江貴文氏の著書『ニッポン社会のほんとの正体 投資とお金と未来』より一部抜粋・再構成のうえ、その実体をお届けします。 ■退職金(退職一時金)とはなんだろう? 長年の勤務に対する功績報酬。退職後の生活支援金。だいたいそんなポジティブなイメージを持っている人が多いと思う。でもその認識は半分正しくて、半分誤りだ。
たしかに定年になってそれなりの退職金を得れば、老後の足しにはなるだろう。退職所得には大きな税制優遇もある。でもそこで手にする退職金はなんら特別なものではない。その実体は「給与の後払い」にすぎないのだ。 退職する従業員に会社がまとまった額のお金を一括支給する――。実はそのような制度は世界にあまり例がない。日本独自の習慣なのだ。現在の退職金制度が普及したのは戦後すぐのころである。 当時、企業はどこも深刻な資金不足におちいっていた。低賃金で働かされる従業員の不満は爆発寸前だ。そこで多くの企業の取った策が、いまは賃上げしない(賃上げできない)代わりに定年時にまとまった報酬を支給するというスキーム、つまり「退職金」の導入だった。毎月支払うべき給与の一部を後払いするというわけだ。
そうして労使が歩み寄り、企業は戦後不況を乗り越えていった。やがて朝鮮特需が到来し、高度経済成長期に突入するのだ。そのときの退職金制度がそのまま今日にいたるまで受け継がれているのである。 しかしいまは戦後ではない。当時とはまるで状況が違う。それにもかかわらず多くの企業がかつての退職金制度を変わらずに用いている(2023年時点で退職金制度のある企業の割合は約75%)。 なぜだろう? そう。そういうことだ。退職金は企業にとって都合のいい制度にほかならないからだ。