堀江貴文「退職金は“給与後払い”という悪しき習慣。働き盛りにもらうお金のほうが何倍も価値がある」
無利息で運転資金を調達できるのである。しかも後払いの際(退職金を支払う際)には感謝までされる。さらに万が一倒産し、退職金にまわす資金がなくなったら支払う必要はない。魔法のような資金スキームである。つまり退職金制度は従業員のためにあるのではない。企業のためにあるのだ。 でも一方で、退職金制度は福利厚生(従業員やその家族に対する生活支援)の一環だとアピールする経営者も少なくない。冒頭で挙げたようなポジティブなイメージがまかり通っているのはそのせいだ。
■福利厚生というアピールはミスリード 中小企業の退職金の相場は、大卒で約1100万円、高卒で約1000万円(新卒入社で定年まで勤務した場合)。大金といえば大金だ。いざ支払うとなれば、それなりの負担にはなる。まして経営状態の思わしくない、内部留保の限られた企業ならなおさらだろう。退職金を工面するのはひと仕事だ。そうした事情を鑑みて、従業員に対する福利厚生だと勝手に決めつけているわけだ。 退職金の性質について法的に明確な定義はない。だから福利厚生だというその決めつけもウソにはならない。しかしウソにはならないが、明らかなミスリードだろう。
退職金制度がある会社は、決算報告書に将来発生する退職金額を「債務(退職給付債務)」として計上する必要がある。従業員にまだ支払われていない賃金という位置づけだ。退職金はあくまで給与の後払いなのである。 その大前提をうやむやにするような決めつけは感心しない。本人にそのつもりはなかったとしても、従業員を欺いているようなものだ。 就職、転職活動で退職金の有無を気にする人は多い。でも、退職金制度がある=労働条件が良い、というのは思い込みにすぎない。働き盛りの30代、40代ともなれば、いろんなことが起きる。結婚、育児、子どもの進学、あるいは独立・起業――。なにかと物入りだ。収入は1円でも多いほうがいい。