「ひたすら我慢したが、本当に許せなかった」...イランの独房で「性的に侮辱」されたイランの女性活動家の「最悪の拘禁生活」
独房の中を14km歩く
――長い独房拘禁で、肉体的、精神的にどのような影響がありましたか? 最初の数日、数ヵ月間は、尋問もされず房にひとり放置されたので、自分が自分でないような混乱状態だった。誰かと話をしたくて尋問を心待ちにしていた。もちろん刑務所長の許可が必要だが、日中なら看守は私と15分の会話が許されていた。私が精神に異常をきたさないために。 しかし、しばらく経つと独房の日課に慣れてくる。前回の経験から、日中、読書の間に2時間の運動をした。独房のなかを歩き回ったり、長い時間をかけてストレッチをしたりした。時には独房のなかで1日に7キロ歩くこともあった。計算方法はこうだ。100粒のビーズがついている数珠があるとして、1往復で1ビーズとカウントする。独房の往復は約5メートル、数珠を1周すると500メートル、14周すれば7キロ。14周を数える際には、デーツの種を使った。 少しずつ、私は独房に、そして刑務所にいることにすら慣れていった。馴染みの看守の姿が見えなければ、まるで家族の誰かを心配するように、何かあったのかと聞く。 241棟の女性看守の振る舞いは、209棟の看守とは全く違っていた。見た目や服装まで違う。年齢は23歳から45歳くらいで、小綺麗でおしゃれな服を着ている。それに対し209棟の看守は40歳以上で政府の規定どおりの服か、制服を着ている。241棟の女性看守のなかには、棟内を政府の規定にそぐわない格好で歩いている人もいて、私はすっかり嬉しくなった。
独房は拷問のための場所
――独房拘禁の体験をまとめると、どのような感じですか? 独房は拷問のための場所だ。 囚人がどのような人間であれ、たたきのめされる。従順でなければ、拷問は2倍になる。たとえば209棟では、独房拘禁に加えて殴打があり、卑猥な言葉、ハンガーストライキの苦しみがあった。これだけのことを経験したのに、さらにまた拘禁されて残酷な仕打ちを受け、再びハンガーストライキをした。外部とコンタクトを取ったり、面会したりすることを禁じられ、独房での時間がいっそう耐えがたくなった。 昼も夜も白い電球がずっと点いていて、目が痛くなり、睡眠も阻害される。これもまた拷問だ。下品な言葉を投げつけられ、性的に侮辱されたとき、ひたすら我慢したが、本当に許せなかった。 もうすぐ処刑されるISISの男が、私の近くの独房で哀歌を絶唱したときには、震え上がった。独房の裏の部屋で、女性が性的に嫌がらせをされている声を聞いたこともある。このふたつの声が、私の独房拘禁で経験した最悪の記憶だ。 翻訳:星薫子
ナルゲス・モハンマディ(イラン・イスラム共和国の人権活動家・ノーベル平和賞受賞者)
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