価格転嫁率、過去最高の44.9%
サプライチェーン別の価格転嫁の状況、卸売業を中心に幅広く進展
価格転嫁率が高い主な業種では、「化学品卸売」(65.0%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(63.0%)などで6割を超えた。他方、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(19.8%)が2割を下回ったほか、「娯楽サービス」(21.7%)、「金融」(25.8%)、「農・林・水産」(27.3%)などで価格転嫁率は低水準となった。 また、サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、改善幅は小さいものの全般的にやや価格転嫁は進展している。とりわけ、サプライチェーン全体に関わる『運輸・倉庫』(34.9%)は3割台に到達。企業からも「物流の2024年問題の後押しもあり、取引先との交渉がスムーズにいくことが多い」(運輸・倉庫)といった声が聞かれ、2024年問題への対応が追い風になっている様子がうかがえた。 他方、川下に位置する「飲食店」(36.0%)や「飲食料品小売」(40.9%)では前回調査から転嫁率は後退し、「ある程度の値上げは消費者も理解してくれるが、あまりにも価格が上がると来店率が下がると思いなかなか値上げに踏み切れない」(飲食店)など、客離れを危惧して転嫁が難しいといった声が寄せられた。業種間で価格転嫁に格差が広がりつつある。
政府の価格転嫁に対する支援は一定の成果があがるも、現状の打破にはさらなる支援が必須
本調査の結果、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、8割近い企業で多少なりとも価格転嫁ができており、価格転嫁率は44.9%と前回から4.3ポイント上昇した。取引先への丁寧な説明などを通じてしっかりと転嫁ができている企業が増えたものの、依然として企業負担の割合は5割を超えている。価格転嫁に対する理解は浸透し、実際に転嫁が少しずつ進んでいるものの、原材料価格の高止まりや人件費の高騰などに加え、同業他社の動向、消費者の節約志向も相まって、「これ以上の価格転嫁は厳しい」といった声も多数寄せられている。進み出した価格転嫁が頭打ちになる可能性もある。 政府の価格転嫁に対する支援は一定の成果があがっているようだが、現状を打破するためには、原材料の安定供給に向けた政策や賃上げの支援を継続しつつ、購買意欲を刺激する大規模な減税など収入の増加につながる多角的な経済施策が必須となるだろう。 調査概要 調査対象企業:2万7191社 有効回答企業:1万1282社(回答率41.5%) 調査期間:2024年7月18日~7月31日 調査方法:インターネット調査