「人生変わった」 資金難に陥った米地方自治体が週32時間労働で成功した理由
(CNN) 昨年の夏、レザベク夫妻は窮地に陥っていた。エリックさんは、より高い収入のために4時間かけて通勤することを検討。二つの仕事をすでにこなしていたクリステンさんは家計を助けるために、すでにフルタイムで働いているスケジュールにさらに1日追加することを計画していた。 【画像】レザベクさん夫妻。州立公園で撮影した2ショット そのとき、2人の雇用主から独特な提案が示された。毎週1日追加される有給休暇を自由に使えるというものだ。 「これは間違いなく、私たちの時間をより大切にするための解決策であり、より多くの選択肢を与えてくれる」(エリックさん) 夫妻は2人の子どもとともにワシントン州のサンファン島で暮らしている。2人とも勤め先はサンファン郡だ。組合は職員の賃上げを交渉していたものの、資金繰りに苦慮している郡は、わずかな生活費の引き上げ以上の昇給を行える余裕はなかった。 その代わり、合意に達したのは、職員が福利厚生付きでフルタイムの職を維持しながら、勤務時間の短縮や柔軟なスケジュールを享受できる週32時間労働だった。 郡のマネジャー、ジェシカ・ハドソンさんは「従業員に福利厚生を提供する方法はたくさんある。さまざまな解決策を受け入れられる限り、たとえ直接的な昇給ではなくても、素晴らしい才能のある従業員を維持できる別の方法が見つかる可能性がある」と語った。 サンファン郡はこのほど、週32時間労働を導入した最初の1年を無事に終えて、報告書を発表した。サンファン郡によれば、採用から定着、従業員の幸福にいたるまで、多くの前向きな結果が得られたほか、組合の賃上げの要求に応じた場合に郡が支払ったであろう金額と比較して、97万5000ドル(約1億5000万円)以上のコスト削減につながったという。 郡によれば、週32時間労働が多くの新たな人材を引き付けている。応募の数は85.5%増加したほか、欠員の23.75%が素早く埋まった。より多くの従業員が職にとどまり、離職率(従業員の離職または退職)は48%減少した。従業員の84%が、ワーク・ライフ・バランスが改善したと回答した。 ハドソンさんは、週32時間労働について、導入時に目指した目標の多くを達成しているとして、この取り組みをさらに拡大する機会を模索していると明らかにした。 レザベク一家にとっては、仕事の負担を軽減し、好きな他の仕事をするための時間の余裕が生まれた。地元の病院でも働いているクリステンさんは現在、40時間の労働にとどまっているにもかかわらず、事実上週6日働いた分の給料を受け取っている。 柔軟に働けるおかげで、エリックさんは小さな農場で作業する時間が得られたほか、地元の消防署でボランティアをしたり、子どもたちの面倒を見たりすることができた。以前は休暇を取る必要があった他の島への移動を伴うサッカーの試合やイベントに、より簡単に参加できるようにもなった。 「ワーク・ライフ・バランスが重要だ」とエリックさん。「賃金が人生の全てではない」