ウクライナ「勝利計画」がウクライナにとって危険な理由
9月26日にバイデン大統領と会談をしたゼレンスキー大統領はウクライナの「勝利計画(Victory Plan)」について説明した(ゼレンスキー大統領のXより)
国連総会にあわせて渡米したウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、9月26日にジョー・バイデン大統領と会談をした。その際、かねてより重要な議題とされてきたウクライナの「勝利計画(Victory Plan)」について、説明をしたとされる。ゼレンスキー大統領は、さらに カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領 の二人の大統領候補とも会い、やはり「勝利計画」を説明したとされている。 ウクライナ政府はまだ、この「勝利計画」の詳細内容を公式には明らかにしていない。ウクライナ政府は、いずれ「勝利計画」を国民に説明する、と述べてきていた。だが訪米が済んでも、まだなお詳細は明らかにされていない。訪米後の政府関係者の発言では、敵の利益にならないように、全てを明らかにするわけにはいかない、とニュアンスが異なる発言も出てきている。バイデン大統領から長距離兵器使用制限の撤廃の回答を得られることがなかった。ブリンケン国務長官は、「勝利計画」を丁寧に分析する、と発言している。ウクライナ政府は、ゼレンスキー大統領の訪米による劇的な進展を望んでいたと思われるが、それはまだ実現していない。 「勝利計画」の内容に真新しいものはない、といった支援国政府関係者の評価も報道されている。アメリカを離れる前のゼレンスキー大統領のメッセージによれば、「勝利計画」は、長射程能力、防衛パッケージ、対露制裁、ロシア資産に関する措置」によって成り立っている。しかし長距離兵器使用制限の撤廃以外の項目は、すでに実施済だ。「勝利計画」の内容のほとんどは、これまで実施してきた措置を、さらに強化していくための支援要請だと考えてよいだろう。
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篠田英朗