停車時は要注意!? 大型ツアラーに採用された前車自動追従ACCが4輪車と違う点
4輪車のACCとの違いは?
このように、トレーサー9 GT+やニンジャH2 SX/SEのACCは、まるで4輪車並みの高性能さが魅力です。でも、注意したいのは、最新のクルマに搭載されている「渋滞追従(または全車速追従)」機能付きではないこと。これは、例えば、ACC作動時に、渋滞などで前車が停止すると自車も自動で停止。前車が再び発進すると、ドライバーの操作などで前車追従を再開するという機能です。 一方、例えば、トレーサー9 GT+のACCでは、設定できる巡航速度は、最低速度30~50km/h(ギヤによって異なる)で、最高速度160km/h。例えば、ギヤが1速や2速のときに、30km/h以下の速度になると機能は停止します。そのため、渋滞などで前車が停車すると、後続のバイクに乗るライダーはブレーキ操作を必要とします。 また、レーダー連携UBSの対応速度範囲は30~150km/hで、一般道などでACCを使っていない時には、ライダーがブレーキ操作を行わないと作動しないようになっています。 理由は、ヤマハの開発者によれば、「ブレーキをかけていないのに、バイクが勝手にブレーキをかけてしまうと、ライダーは予期しない制動により体が前のめりになってしまい、最悪の時は前方へ飛び出してしまう危険性がある」ためだとか。 特に、コーナリング中の予期せぬブレーキは、ライダーにとって危険度が増すといえます。加減速で重心が前後に移動するバイクでは、4輪で走るクルマほど安定性が高くないためです。 このような設定は、ニンジャH2 SXのACCも同様で、ギヤごとに設定された一定の速度以下になるとシステムを解除する仕組みになっています。つまり、停車時にはライダー自身のブレーキ操作が必要だということです。トレーサー9 GT+と同じく、例えば、渋滞などで前走車が急に減速し停止した場合、後続のバイクはライダー自身のブレーキ操作を必要とします。 4輪車でも、古い車種や安価なモデルには、渋滞追従機能のないACCを搭載している場合もあります。それらは、ACC作動時に渋滞などで一定速度以下になると、機能がオフとなります。つまり、トレーサー9 GT+やニンジャH2 SXなどのACCは、そうした4輪車と同じということです。いずれも、作動する条件を知らないままに、運転していると非常に危険だといえます。 特に、ACC作動時に前の車両が急減速や停止した場合、自車も自動で停まってくれると思い込んでいると、前車へ追突してしまう危険性は大! バイクの場合は、追突の衝撃で、ライダーの体が追突した前車へ投げ出されてしまい、大事故につながる恐れもあります。 ほかにも、機能の作動に不可欠なレーダーは、例えば、大雨や降雪時など、天候や周囲の状況によっては、先行車を正しく検知しない場合もあります。 ACCは、とても便利な機能ですが、正しい作動条件を事前に知っておかないと、最悪の事態を招く場合もあることを知っておきましょう。くれぐれも、万能でないことを理解し、「まさかのときには自分でブレーキをかける」といった意識を持って、安全なライディングを心掛けるのが一番だといえます。
平塚直樹