停車時は要注意!? 大型ツアラーに採用された前車自動追従ACCが4輪車と違う点
トレーサー9GT+にはレーダー連携ブレーキも採用
では、国産ツアラーの場合には、どんな機能を採用しているのでしょうか? まずは、ヤマハのトレーサー9GT+。888cc・直列3気筒エンジンを搭載するスポーツツアラー「トレーサー9GT」をベースにした上級バージョンです。 2023年に登場したこのモデルには、フロントカウルに新しくミリ波レーダーを搭載することで、ヤマハ車で初めて前車を追従するACCを搭載しています。 主な機能は、まず、ミリ波レーダーにより、前車の有無や車間を検知。その情報を元に、状況に応じて、定速巡航はもちろん、前車との車間が近い場合は減速、離れた場合は設定速度まで加速するといった制御を自動的で行います。 なお、ACCは約30km/h以上(使用するギアによって異なる)で走行中に作動。追従走行時の車間設定は4段階から選択可能です。 また、コーナーなどで車体の旋回を検知すると、車速の上昇を抑えたり、先行車がいる場合は追従加速度も制限する「旋回アシスト機能」も採用。コーナリング時の安全性にも貢献します。 加えて、ライダーが追い越し車線側へウインカーを出し、車両が追い越し状態にあると判断すると、通常の車速回復時よりもスムーズに加速する「追い越しアシスト機能」も装備。これらさまざまなACCの機能により、ツーリング時などでライダーの疲労軽減に貢献してくれます。 トレーサー9GT+では、さらに、「レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)」も搭載します。UBSとは、ヤマハ独自の前後連動ブレーキ機構で、後輪ブレーキを操作すると、前輪にもほどよく制動力を配分して、良好なブレーキフィーリングをもたらすことが特徴です。 そのUBSとミリ波レーダーをマッチングさせ、より機能をアップデートさせたのがトレーサー9GT+。従来から搭載している高機能6軸「IMU」とミリ波レーダーが感知した情報をもとに、前走車との車間が近く衝突の恐れがあるにも関わらず、ライダーのブレーキ入力が不足している場合に、システムが作動。前後配分を調整しながら自動でブレーキ力をアシストすることで、衝突回避のための操作を手助けしてくれます。 この機能は、例えば、高速道路などでACCを作動させ走行車線を走っていて、ICやSAの合流車線からクルマが急に前へ割り込んできたときなどに効果を発揮します。レーダーセンサーで割り込み車両を検知したバイクが、自動で減速すると共に、車体を安定させながら適切な車間距離を保ってくれるのです。 しかも、これらシステムは、電子制御サスペンションとも連動し、ブレーキング時に過度なピッチングを抑制するような制御も実施します。例えば、前ブレーキを強くかけるなどで、フロントフォークが沈みすぎて後輪が浮いてしまうなど、制動時におけるバイクの前後動を電子制御サスペンションが極力抑えてくれるのです。 ほかにも、トレーサー9 GT+には、ヤマハが第3世代と呼ぶ新型のクイックシフターも採用。ご存じの通り、クイックシフターは、クラッチレバーやアクセルを操作しなくても、ペダル操作のみでシフトチェンジを可能とする装備です。 ヤマハの第3世代クイックシフターでは、加速時・減速時などの状況を問わず、シフトアップとダウンの両方をサポート。追い越し時などシフトダウンにより加速力を強めたい時や、制動時などにエンブレ効果を弱めたい時などにも効果を発揮します。また、ACCとも連動。ACC作動中の車両の加減速(エンジン回転数変化)に即したシフト操作を可能としています。 なお、トレーサー9GT+の価格(税込)は182万6000円です。