イーロン・マスクが謎の企業「United States of America Inc.」を設立
陰謀論との関連は?
米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、マスクはアメリカPACへの献金とは別に、出資者の開示が法律で義務付けられていない「ダークマネー」と呼ばれる出所不明の献金を集める団体を通じて、数百万ドルを保守派の広告キャンペーンに提供している。2022年にはマスクが出資した5000万ドル超が、トランスジェンダーの権利や移民を攻撃する広告を展開する政治団体「Citizens for Sanity」に流れていたという。この団体は、トランプの元スピーチライターであるスティーブン・ミラーとつながりがある。 マスクの新会社はいずれもFECの記録に記載がなく、選挙資金の授受に利用されているかは不明だ。FECへの提出書類は最新の対象期限が今年度第3四半期までで、2社が法人化された10月は含まれていない。 多くの著名人と同様に、マスクは合同会社やペーパーカンパニーを利用して自身の活動の詳細をあいまいにしている。テキサス州バストロップでは、マスクのトンネル掘削会社ボーリング・カンパニーがGapped Bass(ギャップド・バス)という名称の合同会社を通じて広大な土地を購入した。フォーブスは先に、マスクの人工知能(AI)スタートアップ企業xAIが、姉妹企業と秘密保持契約を結ばせることでスーパーコンピュータープロジェクトを秘密裏に進めようとしていたことを報じている。 興味深いことに、United States of America Inc.という社名は、極右の陰謀論に登場する名称と同じだ。 一部の過激な陰謀論者や、政府による統治を否定する「ソブリン・シチズン(主権市民)」と呼ばれる反政府主義者たちは、コロンビア特別区(首都ワシントンD.C.)が地方自治体として成立した1871年の法律の誤った解釈に基づき、米国が秘密裏に営利企業として再編されたと信じている。 2014年に連邦法執行官と暴力的な対立を繰り広げ、主権運動の象徴となったクライブン・バンディの息子ライアン・バンディは、その後の米政府を相手取った訴訟において「米合衆国株式会社」との表現を持ちだした。2021年にはQアノン信奉者らがこの主張を再利用し、ジョー・バイデン大統領の就任式は非合法だったと主張した。この陰謀論は、歴史家や法律専門家、偽情報研究者によって完全に否定されている。